【古文 尊敬語 まず覚えたい尊敬語】
以下の空欄へ、尊敬語を書きこみなさい。
平常語 | 尊敬語 | かな | 現代訳 |
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言ふ | 宣ふ | のたまふ | おっしゃる |
言ふ | 仰す | おほす | おっしゃる |
聞く | 聞こしめす | きこしめす | お聞きになる |
行く | おはす | おはす | いらっしゃる |
行く | おはします | おはします | いらっしゃいます |
与ふ | 給ふ | たまふ | お与えになる |
与ふ | 賜す | たまはす | お与えになる |
有り | おはす | おはす | いらっしゃる |
居り | おはします | おはします | いらっしゃる |
思ふ | おぼす | おぼす | 思われる |
思ふ | おぼしめす | おぼしめす | 思われる |
寝 | 大殿籠る | おおとのごもる | おやすみなさる |
【古文 尊敬語 品詞分解】
敬語について、以下の文章を現代語訳し、解説文を埋めなさい。
古文:心得ず、仰せらる。
現代:納得できず、おっしゃる。
解説:古文「心得ず、仰せらる」を、品詞分解すると、
心得(動詞 心得 未然形)+ず(助動詞 ず 連用形)+仰せ(動詞 仰す 未然形)」+らる(助動詞 らる 終止形)となります。
動詞「仰す」は尊敬語で、動詞「
言ふ」が平常語で、対応します。
古典日本語「仰す」は、現代日本語「
おっしゃる」へ、継承されました。
この古文には、主語が
省略されているので、尊敬語「仰す」により、主語を推定します。
古文:大臣(おとど)、一首(いっしゅ)、詠むべしと、仰せけり。
現代:大臣は、一首、詠むべきと、おっしゃったそうだ。
解説:古文「大臣、一首、詠むべしと、仰せけり」を、品詞分解すると、
大臣(名詞)+一首(名詞)+詠む(動詞 詠む 終止形)+べし(助動詞 べし 終止形)+と(助詞 と 引用)+仰せ(動詞 仰す 連用形)+けり(助動詞 けり 終止形)となります。
動詞「仰す」は尊敬語で、動詞「
言ふ」が平常語で、対応します。
古典日本語「仰す」は、現代日本語「
おっしゃる」へ、継承されました。
この古文には、
敬語名詞「
大臣」があるので、敬意の対象が明確です。
古文:若君(わかぎみ)、市中へ、おはしましける。
現代:若君が、市中へ、いらっしゃいます。
解説:古文「若君、市中へ、おはしましける」を、品詞分解すると、
若君(名詞)+市中(名詞)+へ(助詞 へ 対象)+おはしまし(動詞 おはします 連用形)+けり(助動詞 ける 連体形)となります。
動詞「おはします」は尊敬語で、動詞「
有り」や「
行く」が平常語で、対応します。
古典日本語「おはします」は、現代日本語「
いらっしゃる」へ、継承されました。
この古文には、「若君」という敬語名詞があり、「君」の字は、
皇族(こうぞく)を暗示します。
古文:御裳(おも)、唐(から)の御衣(おんころも)の親王、おはしますぞ、いみじき。
現代:御裳と、唐衣の(姿の)親王が、いらっしゃるのが、素晴らしい。
解説:古文「御裳、唐の御衣の親王、おはしますぞ、いみじき」を、品詞分解すると、
御裳(名詞)+唐(名詞)+の(助詞 の 連体)+御衣(名詞)+の(助詞 の 連体)+親王(名詞)+おはします(動詞 おはします 連体形)+ぞ(助詞 ぞ 係助詞)+いみじき(形容詞 いみじ 連体形)となります。
動詞「おはします」は尊敬語で、動詞「
有り」や「
行く」が平常語で、対応します。
古典日本語「おはします」は、現代日本語「
いらっしゃる」へ、継承されました。
この古文には、文末には、尊敬語が見当たりません。文末は、形容詞「いみじき」であり、古典日本語では、形容詞は、敬語になりません。しかし、現代日本語では、形容詞も、敬語になりえます。例えば、現代日本語の形容詞「美しい」は、「
お美しい」という敬語として、用いる場合があります。
古文:親王(みこ)、大殿籠れり。
現代:親王は、おやすみになっている。
解説:古文「親王、大殿籠れり」を、品詞分解すると、
親王(名詞)+大殿籠れ(動詞 大殿籠る 已然形)+り(助動詞 り 終止形)となります。
動詞「大殿籠る」は尊敬語で、動詞「
寝(ぬ)」が平常語で、対応します。
古典日本語「大殿籠る」は、現代日本語「
おやすみなさい」へ、継承されました。
この古文には、
敬語名詞「
親王」があるので、敬意の対象が明確です。
古文:めでたきこと、大袿(おおうちき)、給ふ。
現代:好ましいことに、大袿を、お与えになる。
解説:古文「めでたきこと、大袿、給ふ」を、品詞分解すると、
めでたき(形容詞 めでたし 連体形)+こと(名詞)+大袿(名詞)+給ふ(動詞 給ふ 終止形)となります。
動詞「給ふ」は尊敬語で、動詞「
与ふ」が平常語で、対応します。
古典日本語「「給ふ(たまふ)」は、現代日本語「
給食(きゅうしょく)」や「
給付(きゅうふ)」など、公文書の用語として、継承されました。
大袿(おおうちき)とは、和服の一種です。古典世界では、相手を大事に思う場合に、「衣服」や「武器」や「文房具」など、身体に携帯するものを、贈ります。
この古文には、主語が
省略されているので、尊敬語「給ふ」により、主語を推定します。
古文:御直垂(おんひたたれ)を、押し出でして、賜せけり。
現代:御直垂を、押し出して、お与えになったそうだ。
解説:古文「御直垂を、押し出でして、賜せけり」を、品詞分解すると、
御直垂(名詞)+を(助詞 を 対象)+押し出で(動詞 押し出づ 連用形)+し(動詞 す 連用形)+て(助詞 て 接続)+賜せ(動詞 賜す 連用形)+けり(助動詞 けり 終止形)となります。
動詞「賜す(たまはす)」は尊敬語で、動詞「
与ふ」が平常語で、対応します。
古典日本語「賜す(たまはす)」は、現代日本語「
恩賜公園(おんしこうえん)」など、公共施設の用語として、継承されました。
御直垂(おんひたたれ)とは、和服の一種で、貴族男性の正装です。古典世界では、儀式に臨むにあたり、直垂を着用しました。
この古文には、主語が
省略されているので、尊敬語「賜す(たまはす)」により、主語を推定します。
【古文 尊敬語 問題記述】
問題:平安時代に、敬語はどのような対象に用いられましたか。
記述:平安時代に、敬語は皇族・後宮・貴族・神職・空間に、用いられました。
皇族の最高権力者は、奈良時代以前は大王(おおきみ)と呼ばれ、平安時代以降は
帝(みかど)と呼ばれ、現代日本語では日本国憲法により天皇(てんのう)と呼ばれます。皇族のうち、男性の皇位継承者を
親王(しんおう)と呼びますが、源氏物語では宮(みや)とも呼ばれています。皇族は、もっとも位階が高く、後宮や貴族は、皇族へ敬語を用います。
後宮は、天皇から寵愛される女性が住むところです。後宮には、女性独自の位階があり、摂関政治で権力の頂点に昇りつめた藤原氏は、娘たちを
中宮(ちゅうぐう)・
皇后(こうごう)として入内(にゅうだい)させました。源氏物語の主人公である光源氏(ひかるげんじ)の母親は、後宮では
更衣(こうい)という低い身分にも関わらず、天皇から寵愛されたので、他の女性から嫉妬される描写があります。江戸時代になると、武家将軍の後宮として、奥方(おくのかた)という敬称が生まれ、現代日本語の奥さん(おくさん)という敬称へ、変化していきます。貴族は、後宮へ敬語を用います。
貴族は、血統と役職により、位階が定まりました。血統とは、氏(うじ)のことで、藤原氏や蘇我氏が有名です。645年の大化改新(たいかのかいしん)で、天智天皇とともに戦った中臣鎌足は、
朝臣(あそん)という位階を授けられ、中臣鎌足の子孫も用いています。役職とは、貴族の職務内容のことで、701年の大宝律令(たいほうりつりょう)により大枠が定められ、少しづつ整備されていきました。従三位以上の貴族は
公卿(くぎょう)や
上達部(かんだちめ)と呼ばれ、現代日本語では「幹部」や「重役」に相当します。
貴族は、血統が良ければ、役職も良くなる傾向がありましたが、時代が進むにつれて、血統が良くとも、力量が足らなければ、役職を与えられない事例も増えていき、戦国時代になると
下剋上(げこくじょう)により、血統と役職は必ずしも一致しなくなりました。
神職(しんしょく)は、神道や仏教に関係があり、
禰宜(ねぎ)や
斎宮(さいぐう)などの人間だけではなく、お地蔵様や観音様などの神様にも、敬語を用います。現代日本語の
初詣(はつもうで)は、「年の初めに神に詣でる」という意味で、「詣でる」という敬語が用いられています。今昔物語やお伽草紙などの、一般庶民のための民話では、地域を守る聖なる動物にも、敬語を用いています。
空間は、特別な場所へ、敬語を用います。天皇のお住いである
内裏(うち)は、江戸時代には禁中(きんちゅう)、現代では御所(ごしょ)と呼ばれています。皇族のご旅行先である
御幸(みゆき)は、現代日本語でそのまま地名となっています。伊勢神宮(いせじんぐう)は、江戸時代の小説では「お伊勢様」と呼ばれています。
敬語の注目すべき機能は、身分の上下関係を定めるだけではなく、むしろ、相手の人格を尊重したり、物事を大切にする文脈でも、用いられることです。現代日本語においても、人間社会の権力関係だけでなく、大切にしたい気持ちとしても、敬語は用いられています。その意味で、敬語は、日本人の感性に影響を与えています。
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