助動詞 過去推定のけむ 接続意味活用

古典文法の助動詞で、過去推定の助動詞「けむ」の解説です。助動詞「けむ」の意味・接続・活用を、学習します。

助動詞(じょどうし)とは、用言の後におき、意味を追加する品詞です。助動詞「けむ」は、過去推定の意味を、追加します。

例えば、動詞「行く」の後に、助動詞「けむ」をおくと、「行きけむ」となり、過去推定の意味が、追加されます。「行きけむ」は、現代日本語では「行ったようだ」と訳します。



助動詞は、接続します。接続(せつぞく)とは、前にある言葉に影響して、相手の活用語尾を変化させることです。

例えば、動詞「行く」の後に、助動詞「けむ」をおくと、「行きけむ」となり、「行く」が連用形に変化します。前の言葉を連用形にするので、助動詞「けむ」は、連用形接続(れんようけいせつぞく)と呼びます。



助動詞は、活用します。助動詞「けむ」は、「〇」「〇」「けむ」「けむ」「けめ」「〇」と、活用します。助動詞「けむ」の活用は、助動詞「む」と同じ活用型です。

【古文助動詞　けむ　活用表】

活用形	語幹	活用語尾	識別方法
未然形	ー	ー	ずを付ける
連用形	ー	ー	てを付ける
終止形	ー	けむ	。を付ける
連体形	ー	けむ	物を付ける
已然形	ー	けめ	ばを付ける
命令形	ー	ー	！を付ける

古典日本語の助動詞「けむ」は、現代日本語では助動詞「らしかった」へと、継承されました。




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過去推定の助動詞「けむ」は、過去の状況を推定するという意味が中心にあります。

例えば「水、流れけむ」とあれば、「過去の状況から判断すると、水が流れていたと推定する」という意味です。過去の物事について、時間を限定しています。

助動詞「む」は過去・現在・未来へ、あらゆる時間に用いることができましたが、助動詞「けむ」は過去へのみ、時間を限定して用いることができます。

古典日本語の過去推定の助動詞「けむ」は、現代日本語では、推定の助動詞「らしかった」へと継承されました。

【助動詞　過去推定のけむ　用法】

動詞	動詞＋助動詞けむ	意味
行く	行きけむ	行ったようだ
咲く	咲きけむ	咲いたようだ
見る	見けむ	見たようだ
形容詞	形容詞＋助動詞けむ	意味
おかし	おかしかりけむ	趣深かったようだ
わびし	わびしかりけむ	わびしかったようだ
とく	とかりけむ	速かったようだ
形容動詞	形容動詞＋助動詞けむ	意味
なのめなり	なのめなりけむ	いい加減だったようだ
自然たり	自然たりけむ	自然だったようだ

過去推定の助動詞「けむ」は、連用形接続となります。

過去の助動詞「けむ」＋「けり」は、どれも連用形接続と覚えましょう。

３つの古典助動詞「む・らむ・けむ」は、全て推定の意味を追加します。

３つの古典助動詞「む・らむ・けむ」の違いは、どのような時間で、推定するかです。

【助動詞　む・らむ・けむ　違い】

助動詞	時間	覚え方
む	過去・現在・未来	むは万能
らむ	現在	らむは現在
けむ	過去	けむとけりは過去

助動詞「む」は、過去・現在・未来を推定します。

助動詞「らむ」は、現在を推定します。

助動詞「けむ」は、過去を推定します。


古典日本語では、細かな時間を、助動詞で表現していたのですね。

【古文の助動詞入門】

古文の助動詞は、接続します。接続(せつぞく)とは、前にある言葉に影響して、相手の活用語尾を変化させることです。

例えば、過去推定の助動詞「けむ」は、連用形に接続します。

動詞「行く」の後に、過去推定の助動詞「けむ」をおくと、「行きけむ」となり、「行く」が連用形に変化します。前の言葉を連用形にするので、過去推定の助動詞「けむ」は、連用形接続(れんようけいせつぞく)と呼びます。


例えば、現在推定の助動詞「らむ」は、終止形に接続します。

動詞「行く」の後に、現在推定の助動詞「らむ」をおくと、「行くらむ」となり、「行く」が終止形に変化します。前の言葉を終止形にするので、現在推定の助動詞「らむ」は、終止形接続(しゅうしけいせつぞく)と呼びます。


接続は、用言(動詞・形容詞・形容動詞)にはなく、助動詞と助詞にあります。

【助動詞の接続 まとめ】

接続	助動詞
未然形接続	る・らる・す・さす・む・ず・むず・じ・まし・まほし
連用形接続	き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし
終止形接続	まじ・めり・なり・らむ・らし・ベし
連体形接続	なり・たり・ごとし
特殊接続	り

いきなり覚えようとすると、お腹が一杯になってしまいますね。この表はあくまで参考として、助動詞は１つ１つ習得していくのがコツです。

【助動詞なり　２種類ある】

助動詞の「なり」は２種類あります。終止形接続のなり(推定のなり)と、連体形接続のなり(断定のなり)があります。

【助動詞り　特殊接続】

助動詞「り」は、特殊な接続をします。助動詞「り」は、「サ変動詞に未然形接続」か「四段動詞に已然形接続」します。

動詞	動詞＋助動詞り	接続
サ変動詞 具す	具せり	未然形接続
四段動詞 行く	行けり	已然形接続

助動詞「り」は、接続が「サ未四已(さみしい)」と、語呂合わせで覚えます。

【過去推定の助動詞けむ　接続】

古文の過去推定の助動詞「けむ」は、連用形に接続します。

例えば、動詞「行く」の後に、過去推定の助動詞「けむ」をおくと、「行きけむ」となり、「行く」が連用形に変化します。前の言葉を連用形にするので、過去推定の助動詞「けむ」は、連用形接続(れんようけいせつぞく)と呼びます。

【過去推定の助動詞けむ　接続　まとめ】

動詞	動詞＋助動詞けむ	接続
四段動詞 行く	行きけむ	連用形接続
上一動詞 着る	着けむ	連用形接続
上二動詞 過ぐ	過ぎけむ	連用形接続
下一動詞 蹴る	蹴けむ	連用形接続
下二動詞 出づ	出でけむ	連用形接続
カ変動詞 来	来けむ	連用形接続
サ変動詞 す	しけむ	連用形接続
ナ変動詞 往ぬ	往にけむ	連用形接続
ラ変動詞 おり	おりけむ	連用形接続

古文の助動詞「けむ」は、活用します。活用と接続は、まったく別物なので、注意しましょう。

古文の助動詞「けむ」の活用は、以下です。

【古文助動詞　けむ　活用表】

活用形	語幹	活用語尾	識別方法
未然形	ー	ー	ずを付ける
連用形	ー	ー	てを付ける
終止形	ー	けむ	。を付ける
連体形	ー	けむ	物を付ける
已然形	ー	けめ	ばを付ける
命令形	ー	ー	！を付ける

助動詞「けむ」の活用は、助動詞「む」と同じ活用型です。

助動詞「けむ」は、原則として文末で用いるので、未然形や連用形はありません。

【助動詞の接続】

次の助動詞２７個を、接続によって分類しなさい。

たり / らる / まほし / ごとし / なり / らし / けり / たし / さす / つ / まし / けむ / らむ / じ / き / たり / めり / むず / ず / ベし / す / り / る / む / なり / ぬ / まじ

接続	助動詞
未然形接続
連用形接続
終止形接続
連体形接続
特殊接続

【助動詞けむ　接続　まとめ】

以下の動詞に、過去推定の助動詞「けむ」を接続しなさい。

動詞	動詞＋助動詞けむ	接続
四段動詞 行く		連用形接続
上一動詞 着る		連用形接続
上二動詞 過ぐ		連用形接続
下一動詞 蹴る		連用形接続
下二動詞 出づ		連用形接続
カ変動詞 来		連用形接続
サ変動詞 す		連用形接続
ナ変動詞 往ぬ		連用形接続
ラ変動詞 おり		連用形接続

【助動詞けむ　現代日本語訳】

以下の古文を、現代日本語に訳しなさい。


古文：死にけむこそ、あはれなれ。
現代：　　　　　

古文：京や住み憂かりけむ、東(あずま)の方に行きて、
現代：　　　　　

古文：唐土(もろこし)の人は、これをいみじと思へばこそ、記しとどめて、世にも伝えけめ。
現代：　　　　　

---徒然草 一八段---


古文：色も香も　昔の濃さに　匂へども　植ゑけむ人の　影ぞ恋しき
現代：　　　　　

---古今和歌集 哀傷歌八百五十一首 紀貫之---

【助動詞の接続】

次の助動詞２７個を、接続によって分類しなさい。

たり / らる / まほし / ごとし / なり / らし / けり / たし / さす / つ / まし / けむ / らむ / じ / き / たり / めり / むず / ず / ベし / す / り / る / む / なり / ぬ / まじ

接続	助動詞
未然形接続	る・らる・す・さす・む・ず・むず・じ・まし・まほし
連用形接続	き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし
終止形接続	まじ・めり・なり・らむ・らし・ベし
連体形接続	なり・たり・ごとし
特殊接続	り

【助動詞けむ　接続　まとめ】

以下の動詞に、過去推定の助動詞「けむ」を接続しなさい。

動詞	動詞＋助動詞けむ	接続
四段動詞 行く	行きけむ	連用形接続
上一動詞 着る	着けむ	連用形接続
上二動詞 過ぐ	過ぎけむ	連用形接続
下一動詞 蹴る	蹴けむ	連用形接続
下二動詞 出づ	出でけむ	連用形接続
カ変動詞 来	来けむ	連用形接続
サ変動詞 す	しけむ	連用形接続
ナ変動詞 往ぬ	往にけむ	連用形接続
ラ変動詞 おり	おりけむ	連用形接続

【助動詞けむ　現代日本語訳】

以下の古文を、現代日本語に訳しなさい。


古文：死にけむこそ、あはれなれ。
現代：死んでしまったようなことは、趣深いのだ。

古文：京や住み憂かりけむ、東(あずま)の方に行きて、
現代：京都に住み飽きたようなのか、東の方向へ行ったので

古文：唐土(もろこし)の人は、これをいみじと思へばこそ、記しとどめて、世にも伝えけめ。
現代：中国の人は、これらのことを素晴らしいと思ったからこそ、本に記録して、後世に伝えたようなのだ。

---徒然草 一八段---


古文：色も香も　昔の濃さに　匂へども　植ゑけむ人の　影ぞ恋しき
現代：色も香りも　昔の濃さに　匂うけれど　植えた人の　面影が恋しいのだ

---古今和歌集 哀傷歌八百五十一首 紀貫之---

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