敬語法 丁寧語(ていねいご)

敬語法 丁寧語(ていねいご)

敬語法 丁寧語(ていねいご)

敬語法 丁寧語(ていねいご)

古典文法の敬語法で、丁寧語(ていねいご)の解説です。丁寧語の種類・意味を、学習します。

丁寧語とは、動詞で、動詞の観客(かんきゃく)へ、敬意が表現され、大切な存在であると暗示します。丁寧語は、「動作の外側の人が大事」と覚えましょう。

例えば、丁寧語の動詞「侍り(はべり)」は、補助動詞として用います。

「犬が枝を折る」に、動詞「侍り」を加えると、「犬が枝を折り侍り」となります。この「侍り」は、話を聞いている観客へ、敬意を表現します。枝を折っている犬にも、折られている枝にも、どちらへも敬意を表現しません。

丁寧語は、「です」「ます」「ございます」と現代日本語訳します。



【古文 丁寧語 入門】


能動受動動詞敬語法
白猫が黒犬へ言ひ侍り丁寧語
白猫が黒犬へ言ふ平常語


丁寧語「侍り」は、話している白猫へ、敬意を表現しません。
丁寧語「侍り」は、話されている黒犬へ、敬意を表現しません。
丁寧語「侍り」は、この文章の観客である読者へ、敬意を表現しています。


古文では、同じ文章内で、敬語は統一して用いられます。文章の途中で、いきなり丁寧語を用いたり、いきなり用いなくなったりはしません。



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【科目】


古文(古典)


【領域】


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丁寧語 まず覚えたい丁寧語



【丁寧語 まず覚えたい丁寧語 まとめ】


平常語丁寧語かな現代訳
有り侍りはべりです・ます
有り候ふさぶらふです・ます
有り候ふさうろふです・ます


「候ふ」は、時代によって「さぶらふ」や「さうろふ」と書かれますが、意味は同じです。


丁寧語 補助動詞の用法



【丁寧語 補助動詞の用法とは】


丁寧語は、補助動詞として用いることが、主流です。

補助動詞の用法とは、動詞を、別の動詞へ接続させて、「動詞+動詞」として、用いることです。

「動詞+動詞」のうち、前部の動詞を本動詞(ほんどうし)と呼び、後部の動詞を補助動詞(ほじょどうし)と呼び、区別します。


本動詞補助動詞動詞+動詞解説
行く侍り行き侍り古文の補助動詞用法
歩く候ふ歩き候ふ古文の補助動詞用法
行くます行きます現代文の補助動詞用法
歩くいる歩いている現代文の補助動詞用法




【丁寧語 補助動詞の用法 例文】


丁寧語例文現代訳
侍り行き侍り行きます
侍り見侍り見ます
侍り見侍り見ます
侍り出で侍り出ます
侍りし侍りします
候ふ行き候ふ行きます
候ふ見候ふ見ます
候ふ見候ふ見ます
候ふ出で候ふ出ます
候ふし候ふします


古典日本語の丁寧語は、現代日本語の丁寧語「です」「ます」「ございます」と、訳します。


補助動詞と助動詞 同じと違い



【補助動詞と助動詞 同じと違い】


補助動詞と助動詞には、共通点と相違点が、あります。


補助動詞助動詞共通相違
動詞へ接続する動詞へ接続する共通
意味を加える意味を加える共通
接続は連用形のみ接続は助動詞により異なる相違
単独でも用いる(本動詞になれる)単独では用いない相違



補助動詞と助動詞の共通点は、どちらも動詞へ接続することです。

例えば、動詞「す」に補助動詞「侍り」を接続すると、「し侍り」となります。動詞「す」に助動詞「けり」を接続すると、「しけり」となります。どちらも、動詞へ接続しています。



補助動詞と助動詞の共通点は、どちらも動詞へ意味を加えることです。

例えば、動詞「す」に補助動詞「侍り」を接続すると、「し侍り」となり、丁寧の意味が加わります。動詞「す」に助動詞「けり」を接続すると、「しけり」となり、過去の意味が加わります。どちらも、本動詞へ、意味が加わります。



補助動詞と助動詞の相違点は、接続が連用形だけかどうかです。

例えば、動詞「す」に補助動詞「侍り」は連用形接続し、「し侍り」となります。動詞「す」に助動詞「ず」は未然形接続し、「せず」となります。補助動詞は必ず連用形接続ですが、助動詞は連用形以外の接続があります。



補助動詞と助動詞の相違点は、単独で用いるかどうかです。

例えば、動詞「侍り」は、「月、侍り」と単独でも用います。ただし、この場合は補助動詞「侍り」ではなくなり、本動詞「侍り」となります。助動詞は、必ず動詞に接続して用い、単独では用いません。



丁寧語 本動詞の用法



【丁寧語 本動詞の用法とは】


丁寧語は、本動詞としても、用いることがあります。

本動詞の用法とは、動詞を単独で用いることです。

本動詞の用法は、別の動詞へ接続しません。


例文用法現代訳
酒、侍り本動詞用法酒が、あります
酒、飲み侍り補助動詞用法酒、飲みます
月に、候ふ本動詞用法月、です
月に、言ひ候ふ補助動詞用法月に、言います




本動詞の丁寧語は、平常語「あり」に加工してから、現代語訳の丁寧語「です・ます・あります」にするとよいでしょう。

加工手順例文解説
酒、侍り本動詞の「侍り」を見つける
酒、あり敬語から平常語へ加工する
酒が、あります現代日本語の丁寧語にする



丁寧語 問題



【古文 丁寧語 例文】


以下の古文について、解説文の空欄を埋めなさい。

古文:桜の花の、散り侍りけるを見て、詠みける。  ---古今和歌集---

仮名:さくらのはなの、ちりはべりけるをみて、よみける。

解説:この古文には、丁寧語「     」があり、     の用法です。

「散り侍りける」を品詞分解すると、     となります。

「散り侍りける」の現代日本語訳は、「     」となります。




古文:いかなる所にか、この木は候ひけむ。怪しく、麗しく、愛でたき物にも  ---竹取物語---

仮名:いかなるところにか、このきはさぶらひけむ。あやしく、うるわしく、めでたきものにも

解説:この古文には、丁寧語「     」があり、     の用法です。

「候ひけむ」を品詞分解すると、     となります。

「候ひけむ」の現代日本語訳は、「     」となります。




古文:少しも、物詣での気色とも、見え候はず。  ---平家物語---

仮名:すこしも、ものもうでのけしきとも、みえさうらはず。

解説:この古文には、丁寧語「     」があり、     の用法です。

「見え候はず」を品詞分解すると、     となります。

「候ふ」は、平安時代には「さぶらふ」、鎌倉時代以後は「さうらふ」と書きました。

「見え候はず」の現代日本語訳は、「     」となります。




古文:月、見歩くこと、侍りしに  ---徒然草---

仮名:つき、みありくこと、はべりしに

解説:この古文には、丁寧語「     」があり、     の用法です。

「侍りしに」を品詞分解すると、     となります。

「月、見歩くこと、侍りしに」の現代日本語訳は、「     」となります。




古文:「波の下にも、都のさぶらふぞ」と、二位の尼、安徳帝を慰めたてまつりて  ---平家物語--

仮名:「なみのしたにも、みやこのさぶらふぞ」と、にいのあま、あんとくていをなぐさめたてまつりて

解説:この古文には、丁寧語「     」があり、     の用法です。

「都のさぶらふぞ」を品詞分解すると、     となります。

「都のさぶらふぞ」の現代日本語訳は、「     」となります。




古文:北山になむ、某寺と言ふところに、賢き行なひ人侍る。  ---源氏物語 若紫---

仮名:きたやまになむ、なにがしでらといふところに、かしこきおこなひひとはべる。

解説:この古文には、丁寧語「     」があり、     の用法です。

「行なひ人侍る」を品詞分解すると、     となります。

「行なひ人侍る」の現代日本語訳は、「     」となります。





【古文 丁寧語 問題記述】


問題:平安時代に、敬語はどのような対象に用いられましたか。

記述:平安時代に、敬語は皇族・後宮・貴族・神職・空間に、用いられました。

皇族の最高権力者は、奈良時代以前は大王(おおきみ)と呼ばれ、平安時代以降は     と呼ばれ、現代日本語では日本国憲法により天皇(てんのう)と呼ばれます。皇族のうち、男性の皇位継承者を     と呼びますが、源氏物語では宮(みや)とも呼ばれています。皇族は、もっとも位階が高く、後宮や貴族は、皇族へ敬語を用います。

後宮は、天皇から寵愛される女性が住むところです。後宮には、女性独自の位階があり、摂関政治で権力の頂点に昇りつめた藤原氏は、娘たちを          として入内(にゅうだい)させました。源氏物語の主人公である光源氏(ひかるげんじ)の母親は、後宮では     という低い身分にも関わらず、天皇から寵愛されたので、他の女性から嫉妬される描写があります。江戸時代になると、武家将軍の後宮として、奥方(おくのかた)という敬称が生まれ、現代日本語の奥さん(おくさん)という敬称へ、変化していきます。貴族は、後宮へ敬語を用います。

貴族は、血統と役職により、位階が定まりました。血統とは、氏(うじ)のことで、藤原氏や蘇我氏が有名です。645年の大化改新(たいかのかいしん)で、天智天皇とともに戦った中臣鎌足は、     という位階を授けられ、中臣鎌足の子孫も用いています。役職とは、貴族の職務内容のことで、701年の大宝律令(たいほうりつりょう)により大枠が定められ、少しづつ整備されていきました。従三位以上の貴族は          と呼ばれ、現代日本語では「幹部」や「重役」に相当します。

貴族は、血統が良ければ、役職も良くなる傾向がありましたが、時代が進むにつれて、血統が良くとも、力量が足らなければ、役職を与えられない事例も増えていき、戦国時代になると     により、血統と役職は必ずしも一致しなくなりました。

神職(しんしょく)は、神道や仏教に関係があり、          などの人間だけではなく、お地蔵様や観音様などの神様にも、敬語を用います。現代日本語の     は、「年の初めに神に詣でる」という意味で、「詣でる」という敬語が用いられています。今昔物語やお伽草紙などの、一般庶民のための民話では、地域を守る聖なる動物にも、敬語を用いています。

空間は、特別な場所へ、敬語を用います。天皇のお住いである     は、江戸時代には禁中(きんちゅう)、現代では御所(ごしょ)と呼ばれています。皇族のご旅行先である     は、現代日本語でそのまま地名となっています。伊勢神宮(いせじんぐう)は、江戸時代の小説では「お伊勢様」と呼ばれています。

敬語の注目すべき機能は、身分の上下関係を定めるだけではなく、むしろ、相手の人格を尊重したり、物事を大切にする文脈でも、用いられることです。現代日本語においても、人間社会の権力関係だけでなく、大切にしたい気持ちとしても、敬語は用いられています。その意味で、敬語は、日本人の感性に影響を与えています。


丁寧語 解答解説



【古文 丁寧語 例文】


以下の古文について、解説文の空欄を埋めなさい。

古文:桜の花の、散り侍りけるを見て、詠みける。  ---古今和歌集---

仮名:さくらのはなの、ちりはべりけるをみて、よみける。

解説:この古文には、丁寧語「侍り」があり、補助動詞の用法です。

「散り侍りける」を品詞分解すると、散り(動詞 散る 連用形)+侍り(動詞 侍り 連用形)+ける(助動詞 けり 連体形)となります。

「散り侍りける」の現代日本語訳は、「散ってしまったそうです」となります。




古文:いかなる所にか、この木は候ひけむ。怪しく、麗しく、愛でたき物にも  ---竹取物語---

仮名:いかなるところにか、このきはさぶらひけむ。けしく、うるわしく、あいでたきものにも

解説:この古文には、丁寧語「候ふ」があり、本動詞の用法です。

「候ひけむ」を品詞分解すると、候ひ(動詞 候ふ 連用形)+けむ(助動詞 けむ 連体形)となります。

「候ひけむ」の現代日本語訳は、「ありましたでしょうか」となります。




古文:少しも、物詣での気色とも、見え候はず。  ---平家物語---

仮名:すこしも、ものもうでのけしきとも、みえさうらはず。

解説:この古文には、丁寧語「候ふ」があり、補助動詞の用法です。

「見え候はず」を品詞分解すると、見え(動詞 見る 連用形)+候は(動詞 候ふ 未然形)+ず(助動詞 ず 終止形)となります。

「候ふ」は、平安時代には「さぶらふ」、鎌倉時代以後は「さうらふ」と書きました。

「見え候はず」の現代日本語訳は、「見えません」となります。




古文:月、見歩くこと、侍りしに  ---徒然草---

仮名:つき、みありくこと、はべりしに

解説:この古文には、丁寧語「侍り」があり、本動詞の用法です。

「侍りしに」を品詞分解すると、侍り(動詞 侍り 連用形)+し(助動詞 き 連体形)+に(格助詞 時空)となります。

「月、見歩くこと、侍りしに」の現代日本語訳は、「月を、見て歩くことが、ありました(時)に」となります。




古文:「波の下にも、都のさぶらふぞ」と、二位の尼、安徳帝を慰めたてまつりて  ---平家物語--

仮名:「なみのしたにも、みやこのさぶらふぞ」と、にいのあま、あんとくていをなぐさめたてまつりて

解説:この古文には、丁寧語「候ふ」があり、本動詞の用法です。

「都のさぶらふぞ」を品詞分解すると、都(名詞)+の(格助詞 主語)+候ふ(動詞 候ふ 終止形)+ぞ(係助詞)となります。

「都のさぶらふぞ」の現代日本語訳は、「都がありますのよ」となります。




古文:北山になむ、某寺と言ふところに、賢き行なひ人侍る。  ---源氏物語 若紫---

仮名:きたやまになむ、なにがしでらといふところに、かしこきおこなひひとはべる。

解説:この古文には、丁寧語「侍り」があり、本動詞の用法です。

「行なひ人侍る」を品詞分解すると、行なひ(名詞)+人(名詞)+侍る(動詞 侍り 連体形)となります。

「行なひ人侍る」の現代日本語訳は、「仏教僧の人間がいます」となります。





【古文 丁寧語 問題記述】


問題:平安時代に、敬語はどのような対象に用いられましたか。

記述:平安時代に、敬語は皇族・後宮・貴族・神職・空間に、用いられました。

皇族の最高権力者は、奈良時代以前は大王(おおきみ)と呼ばれ、平安時代以降は帝(みかど)と呼ばれ、現代日本語では日本国憲法により天皇(てんのう)と呼ばれます。皇族のうち、男性の皇位継承者を親王(しんおう)と呼びますが、源氏物語では宮(みや)とも呼ばれています。皇族は、もっとも位階が高く、後宮や貴族は、皇族へ敬語を用います。

後宮は、天皇から寵愛される女性が住むところです。後宮には、女性独自の位階があり、摂関政治で権力の頂点に昇りつめた藤原氏は、娘たちを中宮(ちゅうぐう)皇后(こうごう)として入内(にゅうだい)させました。源氏物語の主人公である光源氏(ひかるげんじ)の母親は、後宮では更衣(こうい)という低い身分にも関わらず、天皇から寵愛されたので、他の女性から嫉妬される描写があります。江戸時代になると、武家将軍の後宮として、奥方(おくのかた)という敬称が生まれ、現代日本語の奥さん(おくさん)という敬称へ、変化していきます。貴族は、後宮へ敬語を用います。

貴族は、血統と役職により、位階が定まりました。血統とは、氏(うじ)のことで、藤原氏や蘇我氏が有名です。645年の大化改新(たいかのかいしん)で、天智天皇とともに戦った中臣鎌足は、朝臣(あそん)という位階を授けられ、中臣鎌足の子孫も用いています。役職とは、貴族の職務内容のことで、701年の大宝律令(たいほうりつりょう)により大枠が定められ、少しづつ整備されていきました。従三位以上の貴族は公卿(くぎょう)上達部(かんだちめ)と呼ばれ、現代日本語では「幹部」や「重役」に相当します。

貴族は、血統が良ければ、役職も良くなる傾向がありましたが、時代が進むにつれて、血統が良くとも、力量が足らなければ、役職を与えられない事例も増えていき、戦国時代になると下剋上(げこくじょう)により、血統と役職は必ずしも一致しなくなりました。

神職(しんしょく)は、神道や仏教に関係があり、禰宜(ねぎ)斎宮(さいぐう)などの人間だけではなく、お地蔵様や観音様などの神様にも、敬語を用います。現代日本語の初詣(はつもうで)は、「年の初めに神に詣でる」という意味で、「詣でる」という敬語が用いられています。今昔物語やお伽草紙などの、一般庶民のための民話では、地域を守る聖なる動物にも、敬語を用いています。

空間は、特別な場所へ、敬語を用います。天皇のお住いである内裏(うち)は、江戸時代には禁中(きんちゅう)、現代では御所(ごしょ)と呼ばれています。皇族のご旅行先である御幸(みゆき)は、現代日本語でそのまま地名となっています。伊勢神宮(いせじんぐう)は、江戸時代の小説では「お伊勢様」と呼ばれています。

敬語の注目すべき機能は、身分の上下関係を定めるだけではなく、むしろ、相手の人格を尊重したり、物事を大切にする文脈でも、用いられることです。現代日本語においても、人間社会の権力関係だけでなく、大切にしたい気持ちとしても、敬語は用いられています。その意味で、敬語は、日本人の感性に影響を与えています。


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