【古文 丁寧語 例文】
以下の古文について、解説文の空欄を埋めなさい。
古文:桜の花の、散り侍りけるを見て、詠みける。 ---古今和歌集---
仮名:さくらのはなの、ちりはべりけるをみて、よみける。
解説:この古文には、丁寧語「
」があり、
の用法です。
「散り侍りける」を品詞分解すると、
となります。
「散り侍りける」の現代日本語訳は、「
」となります。
古文:いかなる所にか、この木は候ひけむ。怪しく、麗しく、愛でたき物にも ---竹取物語---
仮名:いかなるところにか、このきはさぶらひけむ。あやしく、うるわしく、めでたきものにも
解説:この古文には、丁寧語「
」があり、
の用法です。
「候ひけむ」を品詞分解すると、
となります。
「候ひけむ」の現代日本語訳は、「
」となります。
古文:少しも、物詣での気色とも、見え候はず。 ---平家物語---
仮名:すこしも、ものもうでのけしきとも、みえさうらはず。
解説:この古文には、丁寧語「
」があり、
の用法です。
「見え候はず」を品詞分解すると、
となります。
「候ふ」は、平安時代には「さぶらふ」、鎌倉時代以後は「さうらふ」と書きました。
「見え候はず」の現代日本語訳は、「
」となります。
古文:月、見歩くこと、侍りしに ---徒然草---
仮名:つき、みありくこと、はべりしに
解説:この古文には、丁寧語「
」があり、
の用法です。
「侍りしに」を品詞分解すると、
となります。
「月、見歩くこと、侍りしに」の現代日本語訳は、「
」となります。
古文:「波の下にも、都のさぶらふぞ」と、二位の尼、安徳帝を慰めたてまつりて ---平家物語--
仮名:「なみのしたにも、みやこのさぶらふぞ」と、にいのあま、あんとくていをなぐさめたてまつりて
解説:この古文には、丁寧語「
」があり、
の用法です。
「都のさぶらふぞ」を品詞分解すると、
となります。
「都のさぶらふぞ」の現代日本語訳は、「
」となります。
古文:北山になむ、某寺と言ふところに、賢き行なひ人侍る。 ---源氏物語 若紫---
仮名:きたやまになむ、なにがしでらといふところに、かしこきおこなひひとはべる。
解説:この古文には、丁寧語「
」があり、
の用法です。
「行なひ人侍る」を品詞分解すると、
となります。
「行なひ人侍る」の現代日本語訳は、「
」となります。
【古文 丁寧語 問題記述】
問題:平安時代に、敬語はどのような対象に用いられましたか。
記述:平安時代に、敬語は皇族・後宮・貴族・神職・空間に、用いられました。
皇族の最高権力者は、奈良時代以前は大王(おおきみ)と呼ばれ、平安時代以降は
と呼ばれ、現代日本語では日本国憲法により天皇(てんのう)と呼ばれます。皇族のうち、男性の皇位継承者を
と呼びますが、源氏物語では宮(みや)とも呼ばれています。皇族は、もっとも位階が高く、後宮や貴族は、皇族へ敬語を用います。
後宮は、天皇から寵愛される女性が住むところです。後宮には、女性独自の位階があり、摂関政治で権力の頂点に昇りつめた藤原氏は、娘たちを
・
として入内(にゅうだい)させました。源氏物語の主人公である光源氏(ひかるげんじ)の母親は、後宮では
という低い身分にも関わらず、天皇から寵愛されたので、他の女性から嫉妬される描写があります。江戸時代になると、武家将軍の後宮として、奥方(おくのかた)という敬称が生まれ、現代日本語の奥さん(おくさん)という敬称へ、変化していきます。貴族は、後宮へ敬語を用います。
貴族は、血統と役職により、位階が定まりました。血統とは、氏(うじ)のことで、藤原氏や蘇我氏が有名です。645年の大化改新(たいかのかいしん)で、天智天皇とともに戦った中臣鎌足は、
という位階を授けられ、中臣鎌足の子孫も用いています。役職とは、貴族の職務内容のことで、701年の大宝律令(たいほうりつりょう)により大枠が定められ、少しづつ整備されていきました。従三位以上の貴族は
や
と呼ばれ、現代日本語では「幹部」や「重役」に相当します。
貴族は、血統が良ければ、役職も良くなる傾向がありましたが、時代が進むにつれて、血統が良くとも、力量が足らなければ、役職を与えられない事例も増えていき、戦国時代になると
により、血統と役職は必ずしも一致しなくなりました。
神職(しんしょく)は、神道や仏教に関係があり、
や
などの人間だけではなく、お地蔵様や観音様などの神様にも、敬語を用います。現代日本語の
は、「年の初めに神に詣でる」という意味で、「詣でる」という敬語が用いられています。今昔物語やお伽草紙などの、一般庶民のための民話では、地域を守る聖なる動物にも、敬語を用いています。
空間は、特別な場所へ、敬語を用います。天皇のお住いである
は、江戸時代には禁中(きんちゅう)、現代では御所(ごしょ)と呼ばれています。皇族のご旅行先である
は、現代日本語でそのまま地名となっています。伊勢神宮(いせじんぐう)は、江戸時代の小説では「お伊勢様」と呼ばれています。
敬語の注目すべき機能は、身分の上下関係を定めるだけではなく、むしろ、相手の人格を尊重したり、物事を大切にする文脈でも、用いられることです。現代日本語においても、人間社会の権力関係だけでなく、大切にしたい気持ちとしても、敬語は用いられています。その意味で、敬語は、日本人の感性に影響を与えています。
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