【古文 尊敬語の補助動詞 例文】
以下の古文について、解説文の空欄を埋めなさい。
古文:あさましきまで、目を驚かしたまふ。 ---
源氏物語 一帖 桐壷---
仮名:あさましきまで、めをおどろかしたまふ。
解説:この古文には、尊敬語「
給ふ」があり、
補助動詞の用法です。
「驚かしたまふ」を品詞分解すると、
驚かし(動詞 驚かす 連用形)+給ふ(動詞 給ふ 終止形)となります。
「驚かしたまふ」の現代日本語訳は、「
お驚かしになる」となります。
古文:良きほどに、出で給ひぬれど ---
徒然草 三十二段---
仮名:よきほどに、いでたまひぬれど
解説:この古文には、尊敬語「
給ふ」があり、
補助動詞の用法です。
「出で給ひぬれど」を品詞分解すると、
出で(動詞 出づ 連用形)+給ひ(動詞 給ふ 連用形)+ぬれ(助動詞 ぬ 已然形)+ど(接続助詞 逆説)となります。
「出で給ひぬれど」の現代日本語訳は、「
お出になされたけれど」となります。
古文:いみじう興じおはします。 ---
大鏡 下百八十三段---
仮名:いみじうきょうじおはします。
解説:この古文には、尊敬語「
おはす」があり、
補助動詞の用法です。
「興じおはします」を品詞分解すると、
興じ(動詞 興す 連用形)+おはします(動詞 おはします 終止形)となります。
「興じおはします」の現代日本語訳は、「
お楽しみなさる」となります。
古文:いみじう感ぜさせ給ひて、大袿、給ふ。 ---
大鏡 下百八十三段---
仮名:いみじうかんぜさせたまひて、おおうちき、たもふ。
解説:この古文には、尊敬語「
給ふ」があり、
補助動詞の用法と、
本動詞の用法の、2つの用法があります。
「感ぜさせ給ひて」を品詞分解すると、
感じ(動詞 感ず 連用形)+させ(助動詞 さす 連用形)+給ひ(動詞 給ふ 連用形)+て(接続助詞 順接)となります。
「感ぜさせ給ひて」の現代日本語訳は、「
お感動なされて」となります。
「大袿、給ふ」を品詞分解すると、
大袿(名詞)+給ふ(動詞 給ふ 終止形)となります。
「大袿、給ふ」の現代日本語訳は、「
大袿を、お与えになる」となります。
【古文 尊敬語 問題記述】
問題:平安時代に、敬語はどのような対象に用いられましたか。
記述:平安時代に、敬語は皇族・後宮・貴族・神職・空間に、用いられました。
皇族の最高権力者は、奈良時代以前は大王(おおきみ)と呼ばれ、平安時代以降は
帝(みかど)と呼ばれ、現代日本語では日本国憲法により天皇(てんのう)と呼ばれます。皇族のうち、男性の皇位継承者を
親王(しんおう)と呼びますが、源氏物語では宮(みや)とも呼ばれています。皇族は、もっとも位階が高く、後宮や貴族は、皇族へ敬語を用います。
後宮は、天皇から寵愛される女性が住むところです。後宮には、女性独自の位階があり、摂関政治で権力の頂点に昇りつめた藤原氏は、娘たちを
中宮(ちゅうぐう)・
皇后(こうごう)として入内(にゅうだい)させました。源氏物語の主人公である光源氏(ひかるげんじ)の母親は、後宮では
更衣(こうい)という低い身分にも関わらず、天皇から寵愛されたので、他の女性から嫉妬される描写があります。江戸時代になると、武家将軍の後宮として、奥方(おくのかた)という敬称が生まれ、現代日本語の奥さん(おくさん)という敬称へ、変化していきます。貴族は、後宮へ敬語を用います。
貴族は、血統と役職により、位階が定まりました。血統とは、氏(うじ)のことで、藤原氏や蘇我氏が有名です。645年の大化改新(たいかのかいしん)で、天智天皇とともに戦った中臣鎌足は、
朝臣(あそん)という位階を授けられ、中臣鎌足の子孫も用いています。役職とは、貴族の職務内容のことで、701年の大宝律令(たいほうりつりょう)により大枠が定められ、少しづつ整備されていきました。従三位以上の貴族は
公卿(くぎょう)や
上達部(かんだちめ)と呼ばれ、現代日本語では「幹部」や「重役」に相当します。
貴族は、血統が良ければ、役職も良くなる傾向がありましたが、時代が進むにつれて、血統が良くとも、力量が足らなければ、役職を与えられない事例も増えていき、戦国時代になると
下剋上(げこくじょう)により、血統と役職は必ずしも一致しなくなりました。
神職(しんしょく)は、神道や仏教に関係があり、
禰宜(ねぎ)や
斎宮(さいぐう)などの人間だけではなく、お地蔵様や観音様などの神様にも、敬語を用います。現代日本語の
初詣(はつもうで)は、「年の初めに神に詣でる」という意味で、「詣でる」という敬語が用いられています。今昔物語やお伽草紙などの、一般庶民のための民話では、地域を守る聖なる動物にも、敬語を用いています。
空間は、特別な場所へ、敬語を用います。天皇のお住いである
内裏(うち)は、江戸時代には禁中(きんちゅう)、現代では御所(ごしょ)と呼ばれています。皇族のご旅行先である
御幸(みゆき)は、現代日本語でそのまま地名となっています。伊勢神宮(いせじんぐう)は、江戸時代の小説では「お伊勢様」と呼ばれています。
敬語の注目すべき機能は、身分の上下関係を定めるだけではなく、むしろ、相手の人格を尊重したり、物事を大切にする文脈でも、用いられることです。現代日本語においても、人間社会の権力関係だけでなく、大切にしたい気持ちとしても、敬語は用いられています。その意味で、敬語は、日本人の感性に影響を与えています。
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