形容動詞の活用 ナリ活用とタリ活用

形容動詞の活用 ナリ活用とタリ活用

形容動詞の活用 ナリ活用とタリ活用

形容動詞の活用 ナリ活用とタリ活用

古典文法の形容動詞(けいようどうし)の活用で、古文のナリ活用とタリ活用の解説です。

ナリ活用の形容動詞の例は「清げなり」です。「清げなり」という形容動詞は「清げならず」「清げなりて」「清げなり。」「清げなる時」「清げなれば」「清げなれ!」と、古典の日本語では変化します。

「清げなり」は「清げ+に+あり」による造語と考え、終止形が「ナリ」になるので、ナリ活用と呼びます。


タリ活用の形容動詞の例は「平然たり」です。「平然たり」という形容動詞は「平然たらず」「平然たりて」「平然たり。」「平然たる時」「平然たれば」「平然たれ!」と、古典の日本語では変化します。

「平然たり」は「平然+と+あり」による造語と考え、終止形が「タリ」になるので、タリ活用と呼びます。



【古文形容動詞 清げなり 活用表】


活用形語幹活用語尾識別方法
未然形清げならずを付ける
連用形清げなり・にてを付ける
終止形清げなり。を付ける
連体形清げなる物を付ける
已然形清げなればを付ける
命令形清げなれ!を付ける


連用形が「に」と「なり」の2種類あることに、注意しましょう。

古典日本語の形容動詞「清げなり」は、現代日本語の形容動詞「清らかだ」に継承されましたが、活用は異なっていますね。



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形容動詞の活用 解説

古文文法の形容動詞は、ナリ活用を学習して、それからタリ活用を学習します。



【形容動詞の活用 ナリ活用】


ナリ活用とは、形容動詞の基本形です。ナリ活用は「名詞+に+あり」という造語だと、考えられています。

例えば、名詞「なのめ」は、現代語訳では「いい加減」を意味します。

この名詞の「なのめ」に、「に」と「あり」を結びつけて、形容動詞「なのめなり」が造語されます。



【古文形容動詞 なのめなり 活用表】


活用形語幹活用語尾識別方法
未然形なのめならずを付ける
連用形なのめなり・にてを付ける
終止形なのめなり。を付ける
連体形なのめなる物を付ける
已然形なのめなればを付ける
命令形なのめなれ!を付ける


連用形が「に」と「なり」の2種類あることに、注意しましょう。


形容動詞のナリ活用は、ナリの語源が「に+あり」であることに注意すれば、簡単に覚えられますね。ラ行変格動詞と、活用語尾が同じですよね。



【形容動詞の活用 タリ活用】


タリ活用とは、「名詞+と+あり」という造語だと、考えられています。

例えば、名詞「平然」に、「と」と「あり」を結びつけて、形容動詞「平然たり」が造語されます。

タリ活用は、ナリ活用に似ています。なぜ、タリ活用とナリ活用を、併用したのでしょうか。

漢語由来の名詞(悠然・漫然・堂堂)の多くは、形容動詞のタリ活用へと、変化しています。(悠然たり・漫然たり・堂堂たり)

語源となる名詞によって、ナリ活用とタリ活用を、使い分けていたと考えられています。



【古文形容動詞 平然たり 活用表】


活用形語幹活用語尾識別方法
未然形平然たらずを付ける
連用形平然たり・とてを付ける
終止形平然たり。を付ける
連体形平然たる物を付ける
已然形平然たればを付ける
命令形平然たれ!を付ける


連用形が「と」と「たり」の2種類あることに、注意しましょう。

形容動詞のナリ活用は、ナリの語源が「と+あり」であることに注意すれば、簡単に覚えられますね。ラ行変格動詞と、活用語尾が同じですよね。




古典日本語の形容動詞は、現代日本語の形容動詞と、だいぶ異なります。

形容動詞の本質は、「名詞」を語源として、形容動詞へと造語することです。


【古典日本語と現代日本語 静かなりと静かだ 活用表】


活用形古典日本語現代日本語識別方法
未然形静かなら静かでず・ないを付ける
連用形静かなり・静かに静かだってを付ける
終止形静かなり静かだ。を付ける
連体形静かなる静かな物を付ける
已然形静かなれ静かならばを付ける
命令形静かなれ静かに!を付ける






【古典形容動詞のまとめ】


1:形容動詞は「あり」を付けたものなので、活用語尾がラ行変格動詞と同じになる。
2:形容動詞の連用形は2種類あり、「に・と」に注意する。助詞の「に・と」と、形容動詞の活用語尾「に・と」は、別物である。


形容動詞の活用 問題



【古文形容動詞 あはれなり 活用表】


活用形語幹活用語尾識別方法
未然形あはれ     ずを付ける
連用形あはれ     てを付ける
終止形あはれ     。を付ける
連体形あはれ     物を付ける
已然形あはれ     ばを付ける
命令形あはれ     !を付ける


連用形が「に」と「なり」の2種類あることに、注意しましょう。





【ラ行変格形容動詞 活用形の識別】


以下の各文のうち、形容動詞の活用形を書け。


夜は、はなやかなる装束(そうぞく)、いとよし。        

身もくたびれ、心も静かならず。        

高山、森々として、一鳥声きかず、        

折節(おりふし)の、移りかはるこそ、ものごとに、あはれなれ。        

涼風、颯颯たる夜なかばに、       

空の雲、あはれにたなびけり。        

契り(ちぎり)深く、あはれならめ。        

木のさまは、憎げなれど、あふち(植物のセンダンの古名)の花、いとをかし。 
     





【ラ行変格形容動詞 現代日本語訳】


以下の古文を、現代日本語に訳しなさい。


古文:身もくたびれ、心も静かならず。
現代:     


古文:世の中は、むつかしげなるものかな。
現代:     


古文:みかどの使ひをば、いかでおろかなりせむ。
現代:     


古文:木のさまは、憎げなれど、あふち(植物のセンダンの古名)の花、いとをかし。
現代:     


古文:夜ははなやかなる装束(そうぞく)、いとよし。
現代:     


古文:契り(ちぎり)深く、あはれならめ。
現代:     


古文:折節の、移りかはるこそ、ものごとに、あはれなれ。
現代:     


古文:涼風、颯颯たる夜なかばに、
現代:     


古文:空の雲、あはれにたなびけり。 
現代:     


古文:高山、森々として、一鳥声きかず。
現代:     

---奥の細道 尿前の関---


形容動詞の活用 解答解説



【古文形容動詞 あはれなり 活用表】


活用形語幹活用語尾識別方法
未然形あはれならずを付ける
連用形あはれなり・にてを付ける
終止形あはれなり。を付ける
連体形あはれなる物を付ける
已然形あはれなればを付ける
命令形あはれなれ!を付ける


連用形が「に」と「なり」の2種類あることに、注意しましょう。





【ラ行変格形容動詞 活用形の識別】


以下の各文のうち、形容動詞の活用形を書け。


夜は、はなやかなる装束(そうぞく)、いとよし。   連体

身もくたびれ、心も静かならず。   未然

高山、森々として、一鳥声きかず、   連用

折節(おりふし)の、移りかはるこそ、ものごとに、あはれなれ。   已然

涼風、颯颯たる夜なかばに、  連体

空の雲、あはれにたなびけり。   連用

契り(ちぎり)深く、あはれならめ。   未然

木のさまは、憎げなれど、あふち(植物のセンダンの古名)の花、いとをかし。   已然





【ラ行変格形容動詞 現代日本語訳】


以下の古文を、現代日本語に訳しなさい。


古文:身もくたびれ、心も静かならず。
現代:肉体も疲れ、精神も落ち着かない。


古文:世の中は、むつかしげなるものかな。
現代:世間は、嫌なものだなあ。


古文:みかどの使ひをば、いかでおろかなりせむ。
現代:天皇の使者を、どうしていい加減に扱おうとするだろうか。(いや、いい加減には扱うまい)


古文:木のさまは、憎げなれど、あふち(植物のセンダンの古名)の花、いとをかし。
現代:木の姿は、憎らしいけれど、センダンの花は、とても素晴らしい。 


古文:夜ははなやかなる装束(そうぞく)、いとよし。
現代:夜は華やかな装いが、とても良い。


古文:契り(ちぎり)深く、あはれならめ。
現代:因縁が深く、しみじみと胸打たれてしまう。


古文:折節の、移りかはるこそ、ものごとに、あはれなれ。
現代:季節が、移り変わる時にこそ、物事(すべて)に、感動してしまう。


古文:涼風、颯颯たる夜なかばに、
現代:涼風が、さわやかな夜半ばに、


古文:空の雲、あはれにたなびけり。 
現代:空の雲が、しみじみと趣深くたなびいていた。


古文:高山、森々として、一鳥声きかず。
現代:高い山で、鬱蒼とした森に、鳥の声ひとつ聞こえない。

---奥の細道 尿前の関---


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