万葉集(まんようしゅう) 古典作品解説

万葉集(まんようしゅう) 古典作品解説

万葉集(まんようしゅう) 古典作品解説

万葉集(まんようしゅう) 古典作品解説

万葉集(まんようしゅう)は、もっとも古い和歌集(わかしゅう)です。仮名文字(かなもじ)の発明より以前の作品で、漢字を当字(あてじ)にして、万葉仮名(まんようがな)で執筆されています。万葉仮名は、漢字から仮名文字への変化を記録しています。



【出典作品】

:万葉集

【さくひん】

:まんようしゅう・まんえふしふ

【作品別名】

:萬葉集(旧字)

【作者編者】

:大友家持

【さくしゃ】

:おおとものやかもち

【成立時代】

:奈良時代

【作品形式】

:和歌(わか)

【出典紹介】

:万葉集(まんようしゅう)は、もっとも古い和歌集(わかしゅう)です。仮名文字(かなもじ)の発明より以前の作品で、漢字を当字(あてじ)とした万葉仮名(まんようがな)で執筆されています。万葉仮名は、漢字から仮名文字への変化を記録しています。万葉集の和歌により、五七五七七(ごおしちごおしちしち)の三十一文字(みそひともじ)の基本構成が完成しました。

難易度は、上級です。古文文法をひととおり学習し、すでに平安時代の作品を読み終えた生徒におすすめです。

【魅力要素】

:古代・言葉遊び・詩歌

【出題頻度】

:B


プロ家庭教師の古文教材で、指導歴10年以上の講師が執筆しています。

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万葉集 万葉仮名(まんようがな)

万葉集 万葉仮名(まんようがな)

万葉集 万葉仮名(まんようがな)



【万葉集 万葉仮名(まんようがな)】


万葉仮名(まんようがな)とは、漢字による当字(あてじ)です。

古代日本列島には、話し言葉だけがあり、文字がありませんでした。漢字という文字が、古代中国から伝来すると、漢字は書き言葉として採用されました。

漢字を当字することによって、大和言葉の言葉を、書き残す表現技術が、生まれていきました。そのような表現美術は、万葉仮名(まんようがな)と呼ばれ、漢字から仮名文字が生まれるまでの、過渡期の表現技術だと、考えられています。

万葉集は、文字においても、構成においても、日本語の原型として評価されています。

中国由来の言葉は、漢語(かんご)と呼ばれ、日本列島由来の言葉は、大和言葉(やまとこば)と呼ばれるようになりました。


万葉集 現代語訳+品詞分解



【万葉集 現代語訳+品詞分解】



【万葉集 百六十三首


古文:神風の 伊勢の国にも あらましを 何しか来けむ 君もあらなくに

仮名:かみかぜの いせのくににも あらましを なにしかきけむ きみもあらなくに

現代:神風の(吹く) 伊勢の国に 居たいのに どうして来てしまったのだろう (大事な)君も居ないのに

品詞分解:神風(名詞) の(助詞 連体) 伊勢(名詞) の(助詞 連体) 国(名詞) に(助詞 時空) も(助詞 強調) あら(動詞 あり 未然形) まし(助動詞 まし 連体形) を(助詞 対象) 何しか(名詞) 来(動詞 来 連用形) けむ(助動詞 けむ 連体形) 君(名詞) も(助詞 強調) あら(動詞 あり 未然形) なく(形容詞 なし 連用形) に(助詞 時空)

解説:詠人(よみびと)は、大来皇女(おおくのひめみこ)で、伊勢神宮の斎宮(さいぐう)でした。





【万葉集 二百三十五首


古文:大君は 神にしませば 天雲の 雷の上に 廬りせるかも

仮名:おおきみは かみにしませば あまぐもの いかづちのうえに いほりせるかも

現代:天皇は 神様でいらっしゃるので 天の雲の 雷の上に お休みになられているのだ

品詞分解:大君(名詞) は(助詞 主語) 神(名詞) に(助動詞 なり 連用形) し(助詞 強調) ませ(助動詞 まし 未然形) ば(助詞 条件) 天雲(名詞) の(助詞 連体) 雲(名詞) の(助詞 連体) 上(名詞) に(助詞 時空) 廬り(動詞 廬る 連用形) せ(助動詞 す 未然形) る(助動詞 り 連体形) かも(助詞 願望)

解説:詠人(よみびと)は、柿本人麻呂(かきもとのひとまろ)です。廬る(いおる)とは、かりそめの宿のことです。「廬る」は旧字体で、「庵る」が新字体です。現代日本語では「庵(いおり)」という名詞が継承されています。





【万葉集 千四百十八首


古文:石走る 垂水の上の 早蕨の 萌え出づる春に 成りにけるかも

仮名:いしばしる たるみのうえの さわらびの もえいづるはるに なりにけるかも

現代:石を走る 流れる水の上に さわらびが 萌え出ている春に なったのですね

品詞分解:石(名詞) 走る(動詞 走る 連体形) 垂水(名詞) の(助詞 連体) 上(名詞) の(助詞 連体) 早蕨(名詞) の(助詞 主語) 萌え(動詞 萌ゆ 連用形) 出づる(動詞 出づ 連体形) 春(名詞) に(助詞 変化) 成り(動詞 成る 連用形) に(助動詞 ぬ 連用形) ける(助動詞 けり 連体形) かも(助詞 願望)

解説:詠人(よみびと)は、志貴皇子(しきのみこ)です。やさしい心の歌ですね。万葉集では、男性も女性も、貴族も農民も、四季(しき)を詠みました。





【万葉集 二千三十九首


古文:祝らが 斎ふ社の 黄葉も 標縄越えて 散るいふものを

仮名:うりらが いわうやしろの もみちばも しめなわこえて ちるいうものを

現代:神職たちが 神へお祈りする神社の 黄葉も 標縄を越えて 散るというものなのだ(だから黄葉も、人間も、生命力が溢れてしまう時があるのだ)

品詞分解:祝ら(名詞) が(助詞 主語) 斎ふ(動詞 斎ふ 連体形) 社(名詞) の(助詞 連体) 黄葉(名詞) も(副助詞) 標縄(名詞) 越え(動詞 越ゆ 連用形) て(接続助詞) 散る(動詞 散る 連体形) いふ(動詞 言ふ 連体形) もの(名詞) を(助詞 対象)

解説:詠人(よみびと)は、不明で、神職であることが想像されます。





【万葉集 二千九百七十五首


古文:高麗錦 紐の結びも 解き放けず いわひて待てど しるし無きかも

仮名:こまにしき ひものむすびも ときさけず いわいてまてど しるしなきかも

現代:高麗錦の 紐の結びも 解き放たずに 身を清めて(君を)待つけれども 現れないなあ

品詞分解:高麗錦(名詞) 紐(名詞) の(助詞 連体) 結び(名詞) も(副助詞) 解き(動詞 解く 連用形) 放け(動詞 放く 未然形) ず(助動詞 ず 連用形) 斎い(動詞 斎ふ 連用形) て(接続助詞) 待て(動詞 待つ 已然形) ど(接続助詞) 験(名詞) 無き(形容動詞 無し 連用形) かも(助詞 願望)

解説:詠人(よみびと)は、不明で、女性であることが想像されます。





【万葉集 四千二百四十首


古文:大船に 真楫しじ貫き この我子を 唐国へ遣る 斎へ神たち

仮名:おおふねに まかぢしじぬき  このあこを からくにへやる いわえかみたち

現代:大船に 立派な櫓(かい)を貫いて 私の子供を 唐国(大陸の中国)へ派遣する 見守ってください神様たちよ

品詞分解:大船(名詞) に(格助詞 時空) 真楫(名詞) しじ貫き(動詞 しじ貫く 連用形) こ(名詞) の(格助詞 連体) 我子(名詞) を(格助詞 対象) 唐国(名詞) へ(格助詞 方向) 遣る(動詞 遣る 終止形) 斎へ(動詞 斎ふ 命令形) 神たち(名詞)

解説:詠人(よみびと)は、藤原太后(ふじわらたいごう)で、光明皇后(こうみょうこうごう)のことです。

万葉集 古典作品解説



【万葉集 古典作品解説】



問:万葉集の成立は、いつですか?
答:万葉集の成立は、759年以降と、考えられています。考古学の研究が進めば、さらに早まる可能性があります。


問:万葉集は、和歌がたくさんあります。どこから読めば良いですか?
答:万葉集は、は、4500首(しゅ)以上の、和歌が収録されています。全ての和歌を詠もうとすると、初学者は気力が続かないと思います。そこで、初学者には、お気に入りの和歌10首を、探すように読むことをおすすめしています。


問:万葉集よりも先に、読書しておく作品はありますか?
答:万葉集よりも先に、古今和歌集を読書してください。万葉集は、まだ日本語が完成していない時期の作品なので、初学者には、読みにくいと思います。古今和歌集・新古今和歌集を読み、そこから過去に戻って、万葉集を読むと、理解しやすくなります。


問:万葉集は、三大集と、どのような関係にありますか?
答:万葉集は、三大集(さんだいしゅう)に、含まれます。万葉集+古今和歌集+新古今和歌集で、三大集を構成します。万葉集は奈良時代、古今和歌集は平安時代、新古今和歌集は鎌倉時代の作品です。読み比べると、日本語の変化が感じられて、面白いです。


問:万葉集の万葉とは、何ですか?
答:万葉(まんよう)とは、万(よろず)の言葉(ことのは)のことです。東洋文化では、言語能力は、植物の見立てにより、表現します。


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