色も香も昔の濃さに匂へども 意味文法品詞
色も香も昔の濃さに匂へども 意味文法品詞
【古今和歌集】
【哀傷歌 八百五十一首 紀貫之】
【古文】
:色も香も 昔の濃さに 匂へども 植ゑけむ人の 影ぞ恋しき
【かな】
:いろもかも むかしのこさに におえども うえけむひとの かげぞこいしき
【現代語訳】
:色も香りも 昔の濃さに 匂うけれど 植えた人の 面影が恋しいのだ
【品詞分解】
:色 も 香 も 昔 の 濃さ に 匂へ ども 植ゑ けむ 人 の 影 ぞ 恋しき
【文法解説】
:色(名詞) も(副助詞) 香(名詞) も(副助詞) 昔(名詞) の(格助詞 連体) 濃さ(名詞) に(格助詞 比較) 匂へ(動詞 匂ふ 已然形) ども(接続助詞 逆説) 植ゑ(動詞 植う 連用形) けむ(助動詞 けむ 連体形) 人(名詞) の(格助詞 連体) 影(名詞) ぞ(係助詞) 恋しき(形容詞 恋し 連体形)
【詩歌解説】
:この詩歌(しいか)は、古今和歌集の哀傷歌(あいしょうか)へ収録された短歌です。哀傷歌とは、他者の不在を悼む(いたむ)ための歌です。現代なら、お別れ会や送別会などが、哀傷歌にふさわしい場面です。
構成は、五七五七七(ごしちごしちしち)の三十一音の音律です。
言葉は、感覚を題材にし、「色」や「香」や「匂ふ」などが用いられています。五感と面影(おもかげ)は、和歌の主題の1つです。
表現は、連想(れんそう)を用いています。まず、色や香りが、五感に訴え、そこへ、亡き家主の面影が連想されます。
構成は、上の句で語感を描き、下の句で面影へと、連想を広げる構成です。
香(か)とは、香りのことです。色と香を合わせて、色香(いろか)となります。
匂ふ(にほふ)とは、五感に心地良いことです。現代日本語の「匂う」は、嗅覚に用いられますが、古典日本語の「匂ふ」は、嗅覚に限定せず、五感全てに用います。
影(かげ)とは、「面影(おもかげ)」のことです。古典日本語の「影」は、現代日本語の「影・光・姿・記憶」など、意味が多義的な言葉です。
詞書(ことばがき)には、「あるじ身まかりにける人の家の梅の花を見てよめる」とあります。
「主(あるじ)が、亡くなった人の家の、梅の花を見て、(この和歌を)詠んだ」という意味です。
作者は、紀貫之(きのつらゆき)で、平安時代の歌人です。
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