秋の夜は露こそことに寒からし 意味文法品詞
秋の夜は露こそことに寒からし 意味文法品詞
【古今和歌集】
【秋歌百九十九首 詠人知らず】
【古文】
:秋の夜は 露こそことに 寒からし 草むらごとに 虫の侘ぶれば
【古文】
:あきのよは つゆこそことに さむからし くさむらごとに むしのわぶれは
【現代語訳】
:秋の夜は わずかな露でもことのほか 寒いらしい 草むらごとに 虫が侘しく鳴いているので
【品詞分解】
:秋 の 夜 は 露 こそ ことに 寒か らし 草むら ごと に 虫 の 侘ぶれ ば
【文法解説】
:秋(名詞) の(格助詞 連体) 夜(名詞) は(格助詞 主語) 露(名詞) こそ(係助詞) ことに(副詞) 寒か(形容詞 寒し 連体形 音便) らし(助動詞 らし 已然形) 草むら(名詞) ごとに(副詞) 虫(名詞) の(格助詞 主語) 侘ぶれ(動詞 侘ぶ 已然形) ば(接続助詞 条件)
【詩歌解説】
:この詩歌(しいか)は、古今和歌集の秋歌(あきうた)へ収録された短歌です。
構成は、五七五七七(ごしちごしちしち)の三十一音の音律です。
言葉は、自然を題材にし、人と虫が、寒さに共感しています。自然への共感は、和歌の特徴です。
表現は、倒置(とうち)を用いています。上の句である五七五が、下の句である七七と、順番が逆になっています。つまり、本当は論理が逆で、「草むらごとに 虫の侘ぶれば 秋の夜は 露こそことに 寒からし」となります。
寒からしとは、形容詞「寒し」+助動詞「らし」です。「寒かるらし」が音便により「寒かんらし」へ、さらに「寒からし」へと、変化しています。
「つゆ」は、掛詞(かけことば)です。掛詞とは、1つの音に、2つの意味を掛けることです。例えば「つゆ」という1つの音に、名詞「露」と副詞「つゆ」の2つの意味を掛けています。
名詞「露」は、水のことです。水蒸気や水玉の、古典表現です。この短歌では、寒さを強調するために用いられています。寒い夜に、手足を水に浸すと、ぞっとしますよね。
副詞「つゆ」は、「わずかに」という意味です。この短歌では、「わずかに水に触れただけでも」という意味です。
動詞「侘ぶ」は、鎌倉時代以降に、「侘び寂び」の美意識へと発展していきました。現代日本語では「侘しい」へ継承されています。
詞書(ことばがき)には、「詠人知らず」とあります。「詠人知らず(よみびとしらず)」とは、誰の作品なのか、作者を調べてみたが、わかりませんでしたという意味です。
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