【土佐日記 古典作品解説】
問:土佐日記の「男もすなる日記」とは、どういう意味ですか?
答:土佐日記は、仮名文字で執筆されました。仮名は、女性が用いるべきという常識がありました。反対に、漢字は、男性が用いるべきという常識がありました。文字について、男性と女性で区別がありました。
同様に、作品にも、男性と女性で区別がありました。日記という作品は、男性が執筆するという常識がありました。
紀貫之は、文字は女性が用いる仮名を採用し、作品は男性が用いる日記を採用しました。
紀貫之の選択は革新的でしたが、935(承平5)年の常識を踏まえると、読者が受容しやすいように「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」と、前文で注意を促したと考えられます。
読者にとっては、「普段は仮名文字を用いている女性の作者」が「あえて男性のように日記という作品に挑戦」していると考えると、理解しやすかったのでしょう。
問:土佐日記の旅行日程は、どのようなものなのですか?
答:土佐日記の旅行日程は、934(承平4)年12月21日から、935(承平5)年2月16日までの、全55日間です。
日数計算は、旧暦によります。旧暦では、12月は29日まで、01月は30日まで、それぞれ計算します。
日数計算は、新暦によると異なります。新暦によれば、12月は31日まで、01月は31日までとなり、旅行日程は全58日間となります。
問:土佐日記の旅路(たびじ)は、どのようなものなのですか?
答:土佐日記の旅路は、以下となります。
日付 | 場所 | 現在の地名 |
12月21日 | 国司館(こくしのたち) | 高知県南国市比江 |
12月22日 | 大津(おおつ) | 高知県高知市大津 |
12月27日 | 浦戸(うらど) | 高知県高知市浦戸 |
12月29日 | 大湊(おおみなと) | 高知県南国市前浜 |
01月09日 | 宇多松原(うだのまつばら) | 高知県香南市岸本 |
01月10日 | 奈半泊(なはり) | 高知県安芸郡奈半利町 |
01月11日 | 羽根(はね) | 高知県室戸市羽根町 |
01月12日 | 室津(むろづ) | 高知県室戸市室津 |
01月29日 | 土佐泊(とさどまり) | 徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦 |
01月30日 | 阿波水門(あわすいもん) | 鳴門海峡 |
01月30日 | 沼島(ぬしま) | 兵庫県南あわじ市沼島 |
01月30日 | 和泉灘(いずみなだ) | (大阪府南西部) |
02月01日 | 黒崎松原(くろさきのまつばら) | 大阪府泉南郡岬町淡輪 |
02月01日 | 箱浦(はこのうら) | 大阪府阪南市箱作 |
02月05日 | 石津(いしづ) | 大阪府堺市浜寺 |
02月05日 | 住吉(すみよし) | 大阪府大阪市住吉区 |
02月06日 | 難波(なにわ) | 大阪府大阪市 |
02月08日 | 鳥飼御牧(とりかいのみまき) | 大阪府摂津市鳥飼 |
02月09日 | 渚院(なぎさのいん) | 大阪府枚方市渚元町 |
02月09日 | 鵜殿(うどの) | 大阪府高槻市鵜殿 |
02月11日 | 八幡宮(やはたのみや) | 石清水八幡宮 |
02月11日 | 山崎(やまざき) | 京都府乙訓郡大山崎町 |
02月16日 | 島坂(しまざか) | 京都府向日市上植野町御塔道 |
02月16日 | 京都(きょうと) | 京都府京都市 |
問:土佐日記は、いずれの御時(おんとき)の作品なのですか?
答:土佐日記は、醍醐天皇(だいごてんのう)の御時の日記です。和暦では935(承平5)年に、成立したと考えられています。
問:土佐日記は、
古今和歌集と、どのような関係にあるのですか?
答:土佐日記と古今和歌集は、どちらも紀貫之の作品です。紀貫之は、はじめに古今和歌集を編纂し、それから土佐日記を執筆しています。順番として、まず「和歌で仮名文字を習得」し、それから「仮名文字で日記に挑戦」したと考察できます。
問:土佐日記の作品分類で、紀行文とは何ですか?
答:紀行文(きこうぶん)とは、日記のうち、旅行を題材とした作品です。古来より、人間は「自分の移動経験を記録したい」という意欲を持っていました。「紀」の字は、「物事の流れ」を意味します。
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