春望(しゅんぼう) 杜甫作 古典作品解説

春望(しゅんぼう) 杜甫作 古典作品解説

春望(しゅんぼう) 杜甫作 古典作品解説

春望(しゅんぼう) 杜甫作 古典作品解説

春望(しゅんぼう)の白文・書き下し文・日本語訳解説です。春望は、唐時代の漢詩(かんし)です。作者は杜甫(とほ)で、戦乱と人心を背景に持ちます。


【出典作品】

:春望

【さくひん】

:しゅんぼう

【作品別名】

:ー

【作者編者】

:杜甫

【さくしゃ】

:とほ

【成立時代】

:唐時代

【作品形式】

漢詩 > 五言律詩(ごごんぜっく)

【出典紹介】

:春望(しゅんぼう)は、唐時代の漢詩(かんし)です。作者は杜甫(とほ)で、戦乱と人心を背景に持ちます。

漢詩を学びながら、詩歌(しいか)に初挑戦したい生徒におすすめです。難易度は、初級です。他作品への影響が大きい漢詩です。

【魅力要素】

:社会・災害・わび

【出題頻度】

:B


プロ家庭教師の漢文教材で、指導歴10年以上の講師が執筆しています。

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春望(しゅんぼう) 杜甫作 原文

春望(しゅんぼう) 杜甫作 原文

春望(しゅんぼう) 杜甫作 原文


春望 杜甫作 原文】



五言律詩:

$\Large国 破 山 河 在$

$\Large城 春 草 木 深$

$\Large感 時 花 濺 涙$

$\Large恨 別 鳥 驚 心$

$\Large烽 火 連 三 月$

$\Large家 書 抵 萬 金$

$\Large白 頭 掻 更 短$

$\Large渾 欲 不 勝 簪$


春望 杜甫作 書き下し文+日本語訳

春望 杜甫作 書き下し文+日本語訳

春望 杜甫作 書き下し文+日本語訳


春望 杜甫作 書き下し文+日本語訳】



漢文:$\Large国 破 山 河 在$

書下:国 破れて 山河 在り

かな:くに やぶれて さんが あり

日文:都は、破壊され、山河だけが、ある。

解説:五言律詩の第一句です。「国」とは、大都会のことです。ここでは、唐の首都である長安(ちょうあん)を意味しています。



漢文:$\Large城 春 草 木 深$

書下:城 春にして 草木 深し

かな:しろ はるにして くさき ふかし

日文:城壁は 春が来て 草木は 深く茂る。

解説:五言律詩の第二句です。「城」とは「街を囲む壁」のことです。ここでは、長安を防御する城壁(じょうへき)を意味しています。



漢文:$\Large感\textcolor{YellowGreen}{_レ}時 花 濺\textcolor{YellowGreen}{_レ}涙$

書下:時に 感じて 花に 涙を 濺ぐ

かな:ときに かんじて はなに なみだを そそぐ

日文:(乱世という)時代に感じて、花に涙を注ぐ。

解説:五言律詩の第三句です。「時」とは「時代」のことです。ここでは「国が破れるような乱世」を意味しています。「濺」は「注」の旧字体で、水の流れを意味します。



漢文:$\Large恨\textcolor{YellowGreen}{_レ}別 鳥 驚\textcolor{YellowGreen}{_レ}心$

書下:別れを 恨みて 鳥は 心を 驚かす

かな:わかれを うらみて とりは こころを おどろかす

日文:家族と別れた悲しみに、鳥の声を聞いても心が痛む。

解説:五言律詩の第四句です。「別」とは、「別れて離ればなれ」のことです。ここでは、「社会事情により会えない人との別れ」という意味です。「鳥驚心」とは、「人間の悲しみに、鳥も共感してしまう」という意味です。



漢文:$\Large烽 火 連\textcolor{YellowGreen}{_二}三 月\textcolor{YellowGreen}{_一}$

書下:烽火 三月に 連なり

かな:ほうか みつきに つらなる

日文:戦争の火は、三月に(渡って)、連続した。

解説:五言律詩の第五句です。「烽火」とは、「戦争の火」のことです。ここでは「人間の争い」という意味です。



漢文:$\Large家 書 抵\textcolor{YellowGreen}{_二}萬 金\textcolor{YellowGreen}{_一}$

書下:家書 萬金に 抵る

かな:かしょ ばんきんに あたる

日文:家族からの手紙は、たくさんのお金に、相当する(ほど大切だ)。

解説:五言律詩の第六句です。「家書」とは、「家族からの手紙」のことです。「萬」は「万」の旧字体で、たくさんの量を意味します。「萬金」とは、「たくさんのお金」のことです。「抵」とは、「価値が等しいもの」のことです。現代日本語では「抵当」という法律用語に継承されています。



漢文:$\Large白 頭 掻 更 短$

書下:白頭 掻けば 更に 短く

かな:はくとう かけば さらに みじかし

日文:白髪の頭を掻くと、(苦労のために)さらに (髪が)短くなる。

解説:五言律詩の第七句です。「白頭」とは、「髪の色が抜けた白髪」のことです。ここでは「戦乱により疲労困憊した人間の姿」を意味します。



漢文:$\Large渾 欲\textcolor{YellowGreen}{_レ}不\textcolor{YellowGreen}{_レ}勝\textcolor{YellowGreen}{_レ}簪$

書下:渾べて 簪に 勝え ざらんと 欲す

かな:すべて さんに たえ ざらんと ほっす

日文:まとめても (髪の)装飾品で (私の髪が短くて)止めることができないだろう。

解説:五言律詩の第八句です。「渾」とは、「混ぜて一体化する」ことです。現代日本語では「渾然一体(こんぜんいったい)」という四字熟語へ継承されています。「欲」は再読文字で、未来を意味します。ここでは「髪を結ぼうとしても、短すぎて結べないだろう」を意味しています。「勝」とは、「物事を止める」ことです。現代日本語では「景勝地」という熟語へ継承されています。ここでは「髪を止めておくこと」を意味しています。「簪」とは、「かんざし」のことです。ここでは「髪の装飾品」を意味します。



春望(しゅんぼう) 杜甫作 押韻

春望(しゅんぼう) 杜甫作 押韻

春望(しゅんぼう) 杜甫作 押韻


春望 杜甫作 押韻】


五言律詩では、押韻(おういん)を踏みます。押韻とは、同じ発音が現れることです。

五言律詩では、偶数句末に、音韻を踏みます。五言律詩の音韻は、第二句と第四句と第六句と第八句の終わりになります。

第一句:$\Large国 破 山 河 在$

第二句:$\Large城 春 草 木 \textcolor{orangered}{深}$

第三句:$\Large感 時 花 濺 涙$

第四句:$\Large恨 別 鳥 驚 \textcolor{orangered}{心}$

第五句:$\Large烽 火 連 三 月$

第六句:$\Large家 書 抵 萬 \textcolor{orangered}{金}$

第七句:$\Large白 頭 掻 更 短$

第八句:$\Large渾 欲 不 勝 \textcolor{orangered}{簪}$


春望では、深(shin)心(shin)金(kin)簪(shin)で音韻を踏んでいますね。

漢字の音がわかりにくい時は、音読(おんよみ)してみましょう。音読は、もともと中国語由来の発音なので、音韻が探しやすくなります。


春望(しゅんぼう) 杜甫作 対句

春望(しゅんぼう) 杜甫作 対句

春望(しゅんぼう) 杜甫作 対句


春望 杜甫作 対句】


五言律詩では、対句(ついく)を構成します。対句とは、比較により強調することです。

五言律詩の対句は、「第三句と第四句」+「第五句+第六句」で、構成すると、詩を美しくする規則があります。



【五言律詩 対句】


第三句:$\Large感 時 \textcolor{orangered}{花} 濺 涙$

第四句:$\Large恨 別 \textcolor{orangered}{鳥} 驚 心$

春望の対句で、第三句と第四句です。第三句では、移動の自由のないを描き、第三句では、移動が自由なを描いています。この対句で、あらゆる生物を暗示しています。



第五句:$\Large烽 火 連 \textcolor{orangered}{三} 月$

第六句:$\Large家 書 抵 \textcolor{orangered}{萬} 金$

春望の対句で、第五句と第六句です。第五句では、数字のを描き、第六句では、数字のを描いています。この対句で、戦争被害が深刻であることを、暗示しています。




対句を、第一句や第七句など、他句に構成する漢詩も存在はしますが、原則からは外れます。



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