【春望 杜甫作 書き下し文+日本語訳】
漢文:$\Large国 破 山 河 在$
書下:国 破れて 山河 在り
かな:くに やぶれて さんが あり
日文:都は、破壊され、山河だけが、ある。
解説:五言律詩の第一句です。「国」とは、大都会のことです。ここでは、唐の首都である長安(ちょうあん)を意味しています。
漢文:$\Large城 春 草 木 深$
書下:城 春にして 草木 深し
かな:しろ はるにして くさき ふかし
日文:城壁は 春が来て 草木は 深く茂る。
解説:五言律詩の第二句です。「城」とは「街を囲む壁」のことです。ここでは、長安を防御する城壁(じょうへき)を意味しています。
漢文:$\Large感\textcolor{YellowGreen}{_レ}時 花 濺\textcolor{YellowGreen}{_レ}涙$
書下:時に 感じて 花に 涙を 濺ぐ
かな:ときに かんじて はなに なみだを そそぐ
日文:(乱世という)時代に感じて、花に涙を注ぐ。
解説:五言律詩の第三句です。「時」とは「時代」のことです。ここでは「国が破れるような乱世」を意味しています。「濺」は「注」の旧字体で、水の流れを意味します。
漢文:$\Large恨\textcolor{YellowGreen}{_レ}別 鳥 驚\textcolor{YellowGreen}{_レ}心$
書下:別れを 恨みて 鳥は 心を 驚かす
かな:わかれを うらみて とりは こころを おどろかす
日文:家族と別れた悲しみに、鳥の声を聞いても心が痛む。
解説:五言律詩の第四句です。「別」とは、「別れて離ればなれ」のことです。ここでは、「社会事情により会えない人との別れ」という意味です。「鳥驚心」とは、「人間の悲しみに、鳥も共感してしまう」という意味です。
漢文:$\Large烽 火 連\textcolor{YellowGreen}{_二}三 月\textcolor{YellowGreen}{_一}$
書下:烽火 三月に 連なり
かな:ほうか みつきに つらなる
日文:戦争の火は、三月に(渡って)、連続した。
解説:五言律詩の第五句です。「烽火」とは、「戦争の火」のことです。ここでは「人間の争い」という意味です。
漢文:$\Large家 書 抵\textcolor{YellowGreen}{_二}萬 金\textcolor{YellowGreen}{_一}$
書下:家書 萬金に 抵る
かな:かしょ ばんきんに あたる
日文:家族からの手紙は、たくさんのお金に、相当する(ほど大切だ)。
解説:五言律詩の第六句です。「家書」とは、「家族からの手紙」のことです。「萬」は「万」の旧字体で、たくさんの量を意味します。「萬金」とは、「たくさんのお金」のことです。「抵」とは、「価値が等しいもの」のことです。現代日本語では「抵当」という法律用語に継承されています。
漢文:$\Large白 頭 掻 更 短$
書下:白頭 掻けば 更に 短く
かな:はくとう かけば さらに みじかし
日文:白髪の頭を掻くと、(苦労のために)さらに (髪が)短くなる。
解説:五言律詩の第七句です。「白頭」とは、「髪の色が抜けた白髪」のことです。ここでは「戦乱により疲労困憊した人間の姿」を意味します。
漢文:$\Large渾 欲\textcolor{YellowGreen}{_レ}不\textcolor{YellowGreen}{_レ}勝\textcolor{YellowGreen}{_レ}簪$
書下:渾べて 簪に 勝え ざらんと 欲す
かな:すべて さんに たえ ざらんと ほっす
日文:まとめても (髪の)装飾品で (私の髪が短くて)止めることができないだろう。
解説:五言律詩の第八句です。「渾」とは、「混ぜて一体化する」ことです。現代日本語では「渾然一体(こんぜんいったい)」という四字熟語へ継承されています。「欲」は再読文字で、未来を意味します。ここでは「髪を結ぼうとしても、短すぎて結べないだろう」を意味しています。「勝」とは、「物事を止める」ことです。現代日本語では「景勝地」という熟語へ継承されています。ここでは「髪を止めておくこと」を意味しています。「簪」とは、「かんざし」のことです。ここでは「髪の装飾品」を意味します。
質問と回答