香炉峰(こうろほう) 白居易作 古典作品解説

香炉峰(こうろほう) 白居易作 古典作品解説

香炉峰(こうろほう) 白居易作 古典作品解説

香炉峰(こうろほう) 白居易作 古典作品解説

香炉峰(こうろほう)の白文・書き下し文・日本語訳解説です。香炉峰は、唐時代の漢詩(かんし)です。作者は白居易(はくきょい)で、悠々自適な田園文化を背景に持ちます。


【出典作品】

:香炉峰

【さくひん】

:こうろほう

【作品別名】

:ー

【作者編者】

:白居易

【さくしゃ】

:はくきょい

【成立時代】

:唐時代

【作品形式】

漢詩 > 七言律詩(しちごんりっし)

【出典紹介】

:香炉峰(こうろほう)は、唐時代の漢詩(かんし)です。作者は白居易(はくきょい)で、悠々自適な田園文化を背景に持ちます。

漢詩を学びながら、詩歌(しいか)に初挑戦したい生徒におすすめです。難易度は、初級です。日本の高校授業・大学受験でも出題されやすく、枕草子でも参照されています。

【魅力要素】

:田園・休日・自然・悠々自適

【出題頻度】

:A


プロ家庭教師の漢文教材で、指導歴10年以上の講師が執筆しています。

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香炉峰 白居易作 原文


香炉峰 白居易作 原文】



漢文による前文:

$\Large香 炉 峰 下$

$\Large新 卜 山 居$

$\Large草 堂 初 成$

$\Large偶 題 東 壁$


七言律詩:

$\Large日 高 睡 足 猶 慵 起$

$\Large小 閣 重 衾 不 怕 寒$

$\Large遺 愛 寺 鐘 欹 枕 聴$

$\Large香 炉 峰 雪 撥 簾 看$

$\Large匡 廬 便 是 逃 名 地$

$\Large司 馬 仍 為 送 老 官$

$\Large心 泰 身 寧 是 帰 処$

$\Large故 郷 何 独 在 長 安$


香炉峰 白居易作 書き下し文+日本語訳

香炉峰 白居易作 書き下し文+日本語訳

香炉峰 白居易作 書き下し文+日本語訳


香炉峰 白居易作 書き下し文+日本語訳】



漢文:$\Large香 炉 峰 下$

書下:香炉峰の下

かな:こうろほうのした

日文:香炉峰(という山)のふもとで

解説:漢詩の前文です。香炉峰は、漢詩で有名な山です。中国の江西省の廬山(ろざん)に実在します。現代では、世界遺産に登録されています。



漢文:$\Large新 卜\textcolor{YellowGreen}{_二} 山 居\textcolor{YellowGreen}{_一}$

書下:新たに 山居を 卜す

かな:あらたに さんきょを ぼくす

日文:新しく、山小屋を建築するために、占いをする

解説:漢詩の前文です。「卜」とは、占いのことです。どこに山小屋を建築すべきか、幸運を願って占いをしています。




漢文:$\Large草 堂 初 成$

書下:草堂 初めて 成る

かな:そうどう はじめて なる

日文:草堂が、初めて、完成した。

解説:漢詩の前文です。「草堂」とは「安い家」のことで、この漢詩では自分の家を、謙虚に述べています。実際には、自分に暮らしやすい立派な家だったと思います。



漢文:$\Large偶 題\textcolor{YellowGreen}{_二}東 壁\textcolor{YellowGreen}{_一}$

書下:偶 東壁に 題す

かな:たまたま とうへきに 執筆する

日文:たまたま、東側の壁に、執筆する。

解説:漢詩の前文です。「偶」とは「たまたま」のことで、つい気分が盛り上がって、という意味です。「題」は「執筆する」という意味で、現代日本語にも「題名」という言葉が継承されています。



漢文:
$\Large日 高 睡 足 猶 慵\textcolor{YellowGreen}{_レ}起$

書下:日 高く 睡り 足りて 猶ほ 起くるに 慵し

かな:ひ たかく ねむり たりて なほ おくるに ものうし

日文:太陽は高く、睡眠は満ち足りていて、なお、目覚めて行動する気がしない。

解説:七言律詩の第一句です。「慵」とは「気が進まない」のことで、行動をする気力がない状態です。「起」は「目覚めて行動する」ことです。



漢文:
$\Large小 閣 重\textcolor{YellowGreen}{_レ}衾 不\textcolor{YellowGreen}{_レ}怕\textcolor{YellowGreen}{_レ}寒$

書下:小閣に 衾を 重ねて 寒さを 怕れ ず

かな:しょうかくに ふすまを かさねて さむさを おそれず

日文:小さな部屋で、布団を重ねて(寝るので)、寒さは心配でない。

解説:七言律詩の第二句です。「小閣」とは、「小さな部屋」のことで、、この漢詩では自分の部屋を、謙虚に述べています。「衾」とは、「布団」のことです。「怕」とは「怖くて心配する」ことです。「不怕寒」とは、寒さで眠れない心配がない状態です。



漢文:
$\Large遺 愛 寺 鐘 欹\textcolor{YellowGreen}{_レ}枕 聴$

書下:遺愛寺の 鐘は 枕を 欹てて 聴き

かな:いあいじの かねは まくらを そばだてて きき

日文:遺愛寺の鐘の音を、枕を(背もたれに)立てて、聞く。

解説:七言律詩の第三句です。「遺愛寺」とは、中国の江西省の廬山にある寺のことです。「欹」は、「立ち上がる」ことです。ここでは、作者が枕を立てて、背もたれのように扱っています。布団から外に出ないまま、悠々自適に鐘を聞いています。



漢文:
$\Large香 炉 峰 雪 撥\textcolor{YellowGreen}{_レ}簾 看$

書下:香炉峰の 雪は 簾を 撥げて 看る

かな:こうろほうの ゆきは すだれを かかげて みる

日文:香炉峰の(積もった)雪は、簾を、持ち上げて、眺める。

解説:七言律詩の第四句です。「香炉峰」とは、中国の江西省の山のことです。「簾」は、「すだれ」ことで、現代日本ではカーテンに相当します。心地よい部屋にいながら、カーテンの隙間から、雪景色を眺めるとは、優雅な暮らしですね。



漢文:
$\Large匡 廬 便 是 逃\textcolor{YellowGreen}{_レ}名 地$

書下:匡廬は 便ち 是れ 名を 逃るる 地

かな:きょうろは すなわち それ なを のがるる ち

日文:廬山は、つまり、それは、名誉から逃れる(ためにはふさわしい)場所だ。

解説:七言律詩の第五句です。「匡廬」とは、廬山の別名です。「名」は、「名誉」のことで、作者は名誉欲とは離れて、静かな満足感を味わっています。



漢文:
$\Large司 馬 仍 為\textcolor{YellowGreen}{_二}送\textcolor{YellowGreen}{_レ}老 官\textcolor{YellowGreen}{_一}$

書下:司馬は 仍ほ 老を 送るる 官 たり

かな:しばは なお おいを おくる かん たり

日文:司馬(という官職)は、やはり、老後を送る(にふさわしい)役職だ。

解説:七言律詩の第六句です。「司馬」とは、古代中国の公務員の役職で、軍隊を司(つかさど)りました。筆者は、あくせくしないで、適量な仕事をする暮らしを、好んでいます。



漢文:
$\Large心 泰 身 寧 是 帰 処$

書下:心 泰く 身 寧きは 是れ 帰する 処

かな:こころ やすく み やすきは これ きする ところ

日文:心が安らかで、体がくつろぐことが、帰るべき場所だ。

解説:七言律詩の第七句です。「泰」とは、「やすらかな」ことです。「泰」とは、「おだやかな」ことです。「心泰身寧」で、「心身とも落ち着くところ」という意味になります。



漢文:
$\Large故 郷 何 独 在\textcolor{YellowGreen}{_二}長 安\textcolor{YellowGreen}{_一}$

書下:故郷 何ぞ 独り 長安に 在る のみ ならんや

かな:こきょう なんぞ ひとり ちょうあんに ある のみ ならんや

日文:故郷は、どうして長安のみに、あるだろうか。(いや、廬山も故郷と呼べるくらい素晴らしい)

解説:七言律詩の第八句です。「何」は、疑問を意味し、「なんぞーーーんや」と反語で訳しました。「独」は、限定を意味し、「ひとりーーーのみ」と訳しました。作者は、素晴らしい廬山を、第二の故郷のように、愛し始めたようです。



香炉峰 白居易作 押韻

香炉峰 白居易作 押韻

香炉峰 白居易作 押韻


香炉峰 白居易作 押韻】


七言律詩では、押韻(おういん)を踏みます。押韻とは、同じ発音が現れることです。

七言律詩では、偶数句末に、音韻を踏みます。七言律詩の音韻は、第二句と第四句と第六句と第八句の終わりです。

第一句:
$\Large日 高 睡 足 猶 慵 起$

第二句:
$\Large小 閣 重 衾 不 怕 \textcolor{orangered}{寒}$

第三句:
$\Large遺 愛 寺 鐘 欹 枕 聴$

第四句:
$\Large香 炉 峰 雪 撥 簾 \textcolor{orangered}{看}$

第五句:
$\Large匡 廬 便 是 逃 名 地$

第六句:
$\Large司 馬 仍 為 送 老 \textcolor{orangered}{官}$

第七句:
$\Large心 泰 身 寧 是 帰 処$

第八句:
$\Large故 郷 何 独 在 長 \textcolor{orangered}{安}$


香炉峰の漢詩では、寒(kan)看(kan)官(kan)安(an)で音韻を踏んでいますね。

七言律詩では、標準では第一句末にも、押韻を踏みます。しかし、香炉峰の七言律詩では、標準から外れて、第一句末に、押韻を踏んでいません。このような構成を、踏み外し(ふみはずし)と呼びます。

日本語の和歌俳句にも、「字余り」や「字足らず」があるように、あえて音韻を踏み外す場合もあります。

香炉峰 白居易作 対句

香炉峰 白居易作 対句

香炉峰 白居易作 対句


香炉峰 白居易作 対句】


七言律詩では、対句(ついく)を構成します。対句とは、比較により強調することです。

七言律詩の対句は、「第三句と第四句」+「第五句+第六句」で、構成すると、詩を美しくする規則があります。



【七言律詩 対句】


第三句:
$\Large遺 愛 寺 鐘 欹 \textcolor{orangered}{枕} 聴$

第四句:
$\Large香 炉 峰 雪 撥 \textcolor{orangered}{簾} 看$



香炉峰の対句で、第三句と第四句です。第三句では、寝具のを描き、第三句では、外界を分けるを描いています。この対句で、主人公の心地よい生活を、暗示しています。



第五句:
$\Large匡 廬 便 是 \textcolor{orangered}{逃} 名 地$

第六句:
$\Large司 馬 仍 為 \textcolor{orangered}{送} 老 官$

香炉峰の対句で、第五句と第六句です。第五句では、責任かられる姿を描き、第六句では、ゆったりと時間をる姿を描いています。この対句で、主人公が重たい責任から自由であることを、暗示しています。



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