【香炉峰 白居易作 書き下し文+日本語訳】
漢文:$\Large香 炉 峰 下$
書下:香炉峰の下
かな:こうろほうのした
日文:香炉峰(という山)のふもとで
解説:漢詩の前文です。香炉峰は、漢詩で有名な山です。中国の江西省の廬山(ろざん)に実在します。現代では、世界遺産に登録されています。
漢文:$\Large新 卜\textcolor{YellowGreen}{_二} 山 居\textcolor{YellowGreen}{_一}$
書下:新たに 山居を 卜す
かな:あらたに さんきょを ぼくす
日文:新しく、山小屋を建築するために、占いをする
解説:漢詩の前文です。「卜」とは、占いのことです。どこに山小屋を建築すべきか、幸運を願って占いをしています。
漢文:$\Large草 堂 初 成$
書下:草堂 初めて 成る
かな:そうどう はじめて なる
日文:草堂が、初めて、完成した。
解説:漢詩の前文です。「草堂」とは「安い家」のことで、この漢詩では自分の家を、謙虚に述べています。実際には、自分に暮らしやすい立派な家だったと思います。
漢文:$\Large偶 題\textcolor{YellowGreen}{_二}東 壁\textcolor{YellowGreen}{_一}$
書下:偶 東壁に 題す
かな:たまたま とうへきに 執筆する
日文:たまたま、東側の壁に、執筆する。
解説:漢詩の前文です。「偶」とは「たまたま」のことで、つい気分が盛り上がって、という意味です。「題」は「執筆する」という意味で、現代日本語にも「題名」という言葉が継承されています。
漢文:
$\Large日 高 睡 足 猶 慵\textcolor{YellowGreen}{_レ}起$
書下:日 高く 睡り 足りて 猶ほ 起くるに 慵し
かな:ひ たかく ねむり たりて なほ おくるに ものうし
日文:太陽は高く、睡眠は満ち足りていて、なお、目覚めて行動する気がしない。
解説:七言律詩の第一句です。「慵」とは「気が進まない」のことで、行動をする気力がない状態です。「起」は「目覚めて行動する」ことです。
漢文:
$\Large小 閣 重\textcolor{YellowGreen}{_レ}衾 不\textcolor{YellowGreen}{_レ}怕\textcolor{YellowGreen}{_レ}寒$
書下:小閣に 衾を 重ねて 寒さを 怕れ ず
かな:しょうかくに ふすまを かさねて さむさを おそれず
日文:小さな部屋で、布団を重ねて(寝るので)、寒さは心配でない。
解説:七言律詩の第二句です。「小閣」とは、「小さな部屋」のことで、、この漢詩では自分の部屋を、謙虚に述べています。「衾」とは、「布団」のことです。「怕」とは「怖くて心配する」ことです。「不怕寒」とは、寒さで眠れない心配がない状態です。
漢文:
$\Large遺 愛 寺 鐘 欹\textcolor{YellowGreen}{_レ}枕 聴$
書下:遺愛寺の 鐘は 枕を 欹てて 聴き
かな:いあいじの かねは まくらを そばだてて きき
日文:遺愛寺の鐘の音を、枕を(背もたれに)立てて、聞く。
解説:七言律詩の第三句です。「遺愛寺」とは、中国の江西省の廬山にある寺のことです。「欹」は、「立ち上がる」ことです。ここでは、作者が枕を立てて、背もたれのように扱っています。布団から外に出ないまま、悠々自適に鐘を聞いています。
漢文:
$\Large香 炉 峰 雪 撥\textcolor{YellowGreen}{_レ}簾 看$
書下:香炉峰の 雪は 簾を 撥げて 看る
かな:こうろほうの ゆきは すだれを かかげて みる
日文:香炉峰の(積もった)雪は、簾を、持ち上げて、眺める。
解説:七言律詩の第四句です。「香炉峰」とは、中国の江西省の山のことです。「簾」は、「すだれ」ことで、現代日本ではカーテンに相当します。心地よい部屋にいながら、カーテンの隙間から、雪景色を眺めるとは、優雅な暮らしですね。
漢文:
$\Large匡 廬 便 是 逃\textcolor{YellowGreen}{_レ}名 地$
書下:匡廬は 便ち 是れ 名を 逃るる 地
かな:きょうろは すなわち それ なを のがるる ち
日文:廬山は、つまり、それは、名誉から逃れる(ためにはふさわしい)場所だ。
解説:七言律詩の第五句です。「匡廬」とは、廬山の別名です。「名」は、「名誉」のことで、作者は名誉欲とは離れて、静かな満足感を味わっています。
漢文:
$\Large司 馬 仍 為\textcolor{YellowGreen}{_二}送\textcolor{YellowGreen}{_レ}老 官\textcolor{YellowGreen}{_一}$
書下:司馬は 仍ほ 老を 送るる 官 たり
かな:しばは なお おいを おくる かん たり
日文:司馬(という官職)は、やはり、老後を送る(にふさわしい)役職だ。
解説:七言律詩の第六句です。「司馬」とは、古代中国の公務員の役職で、軍隊を司(つかさど)りました。筆者は、あくせくしないで、適量な仕事をする暮らしを、好んでいます。
漢文:
$\Large心 泰 身 寧 是 帰 処$
書下:心 泰く 身 寧きは 是れ 帰する 処
かな:こころ やすく み やすきは これ きする ところ
日文:心が安らかで、体がくつろぐことが、帰るべき場所だ。
解説:七言律詩の第七句です。「泰」とは、「やすらかな」ことです。「泰」とは、「おだやかな」ことです。「心泰身寧」で、「心身とも落ち着くところ」という意味になります。
漢文:
$\Large故 郷 何 独 在\textcolor{YellowGreen}{_二}長 安\textcolor{YellowGreen}{_一}$
書下:故郷 何ぞ 独り 長安に 在る のみ ならんや
かな:こきょう なんぞ ひとり ちょうあんに ある のみ ならんや
日文:故郷は、どうして長安のみに、あるだろうか。(いや、廬山も故郷と呼べるくらい素晴らしい)
解説:七言律詩の第八句です。「何」は、疑問を意味し、「なんぞーーーんや」と反語で訳しました。「独」は、限定を意味し、「ひとりーーーのみ」と訳しました。作者は、素晴らしい廬山を、第二の故郷のように、愛し始めたようです。
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