【昔者荘周夢為胡蝶 書き下し文解説】
訓読:
$\Large昔 者 荘 周$
書下:
昔者、
荘周は
日文:
昔、荘周は
解説:
「昔者」は、熟語で「過去の時間」を意味します。
「荘周」は、荘子の字名です。字名とは、社会人としての名前です。字名は、東洋文化の慣習ですので、漢文を読むための知識として押さえておきましょう。
訓読:
$\Large夢 為\textcolor{YellowGreen}{_二}胡 蝶\textcolor{YellowGreen}{_一}$
書下:
夢に
胡蝶と
為る
日文:
夢で、胡蝶へ変身していた。
解説:
「為」は、「する」という意味に加えて、「変身する」も意味します。ここでは、荘周が夢の中で、「胡蝶に変身する」を意味します。
訓読:
$\Large栩 栩 然 胡 蝶 也$
書下:
栩栩然として胡蝶なり。
日文:
軽やかな美しい、胡蝶だった。
解説:
「栩栩然」は、「軽やかな美しさ」という意味です。
「
也」は、多くの意味を持つ漢字です。ここでは「なり」という
断定の終助詞へ、解釈しています。
訓読:
$\Large自 喻 適\textcolor{YellowGreen}{_レ}志 与$
書下:
自ら
喻しみて
志に
適えるや。
日文:
自由に楽しみ心の思うままなのだ。
解説:
「喻」は、「楽しむ」という意味です。
「志」は、「意志」という意味です。
「
与」は、多くの意味を持つ漢字です。ここでは「や」という
詠嘆の終助詞へ、解釈しています。
訓読:
$\Large不\textcolor{YellowGreen}{_レ}知 周 也$
書下:
周たるを知らざるなり。
日文:
(自分が)荘周であることを、知らなかった。
解説:
「不」は、否定の副詞です。否定の副詞は、漢字ではなく、仮名で訳します。
訓読:
$\Large俄 然 覚$
書下:
俄然と
覚めれば
日文:
俄かに目が覚めると
解説:
「俄」は、「わずかな時間」という意味です。
訓読:
$\Large則 蘧 蘧 然 周 也$
書下:
則ち
蘧蘧然と周なり。
日文:
すなわち、驚くくらい(自分は胡蝶ではなく)荘周である。
解説:
「
則」は、接続詞です。
「蘧」は、「おどろいてぞっとする」という意味です。日本語の擬音語「ぎょぎょ」や「きょろきょろ」へ、継承されています。
訓読:
$\Large不\textcolor{YellowGreen}{_レ}知$
書下:
知らず。
日文:
わからない。
解説:
訓読:
$\Large周 之 夢 為\textcolor{YellowGreen}{_二}胡 蝶\textcolor{YellowGreen}{_一}与$
書下:
周の夢に胡蝶と
為るか
日文:
荘周の夢で胡蝶になったのか
解説:
訓読:
$\Large胡 蝶 之 夢 為\textcolor{YellowGreen}{_レ}周 与$
書下:
胡蝶の夢に周と
為るか
日文:
胡蝶の夢で荘周になったのか
解説:
訓読:
$\Large周 与 胡 蝶$
書下:
周と胡蝶は
日文:
荘周と胡蝶は
解説:
「
与」は、多くの意味を持つ漢字です。ここでは「と」という
並列の接続詞へ、解釈しています。
訓読:
$\Large則 必 有\textcolor{YellowGreen}{_レ}分 矣$
書下:
則ち必ず
分有るかな。
日文:
確かに、必ず(荘周と胡蝶は)区別があるのだ。
解説:
「
矣」は、終助詞です。ここでは断定の意味に解釈しています。
訓読:
$\Large此 之 謂\textcolor{YellowGreen}{_二}物 化\textcolor{YellowGreen}{_一}$
書下:
これの
物化と
謂う。
日文:
これの(現象を)物化という。
解説:
「此」は、指示代名詞で、「この」と日本語訳します。
「
之」は、属性を意味します。ここでは日本語の助詞「の」に解釈しています。
この文章は、
荘子の
斉物論内篇第二のうち、第
三十六章にあります。
荘子は、ありのままの自然の人間像を説く書物で、この章は、人間の夢と現実の感覚について、述べていると考えられます。
人間が体験する夢と現実には、どのような差があるのだろうか、
夢幻性へ
誘う文章となっています。
この文章は「胡蝶の夢」と呼ばれ、日本語の俳句作家である松尾芭蕉へ、影響を与えています。
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