【PISA2018年調査】
OECD(経済協力開発機構)は2019年12月に、PISA(学習到達度調査)2018年調査の結果を発表しました。
【PISA2018年調査 アジア系の台頭】
調査対象の79国家地域のうち、読解リテラシー・数学的リテラシー・科学的リテラシーの3分野で、北京・上海・江蘇・浙江がいずれも1位となりました。シンガポールが2位、マカオが3位となり、アジア系の台頭が著しいです。
なお中国(北京・上海・江蘇・浙江・マカオ)は、地域単位での得点です。
【調査方法 CBT】
PISAの調査方法は、2015年からコンピューターによる調査に移行しています。従来の紙による調査に対して、コンピューターによる調査をCBT(Computer Based Test シービーティー)と呼んでいます。
【日本の成績 全体】
日本は科学的リテラシーと数学的リテラシーで、世界上位を維持しました。一方で、PISA2015年調査と比較して、読解リテラシーで、国別順位や平均得点が低下しました。参加している国家地域79のうち、15位と後退しました。
【対象学年 高校1年生=義務教育終了】
PISAの対象学年は、義務教育修了段階の生徒で、日本では高校1年に調査が実施されています。PISAの試験傾向として、知識技能を実生活のさまざまな場面で活用できるかを、測定しようとします。
【日本の成績 読解リテラシーはやや低下】
日本の読解リテラシーは、調査対象の79国家地域のうち15位、OECD加盟37カ国で11位です。日本の平均得点は504点で、OECD平均よりも高得点を維持しているものの、2015年よりも低下しました。
【日本の成績 数学・科学はトップクラス 格差も少ない】
数学リテラシーは、調査対象の79国家地域のうち6位、OECD加盟37カ国で1位です。日本の平均得点は527点で、日本の平均得点と近い国は、台湾・韓国・エストニアがあります。
階層別では、日本は420点未満(習熟度レベル1以下)の下位層が少なく、格差が少ない教育制度で、607点以上(習熟度レベル5以上)の上位層に厚みがあります。
科学的リテラシーは、調査対象の79国家地域のうち5位、OECD加盟37カ国で2位です。日本の平均得点は529点で、日本の平均得点と近い国は、エストニアがあります。
階層別では、日本は410点未満(習熟度レベル1以下)の下位層が少なく、格差が少ない教育制度で、633点以上(習熟度レベル5以上)の上位層に厚みがあります。
【日本の課題】
日本の課題として、デジタル機器を用いた読解リテラシーが低い点が挙げられています。
【PISA 社会階層分析】
生徒の平均得点と社会階層の分析も実施されており、世界的に社会経済文化的背景(ESCS)が高水準であるほど、得点の高い生徒が増え、社会経済文化的背景(ESCS)が低水準であるほど、得点の低い生徒が増えることが指摘されています。
社会経済文化的背景(ESCS)とは、社会分析の用語で、いわゆる生徒の社会階層を示します。
日本の教育制度の特徴として、生徒の出身階層による格差が、他国よりも少ない点が挙げられます。
【PISAの歴史 2000年から】
PISAは国際比較の学力調査で、2000年から3年ごとに調査されています。調査科目は、読解リテラシー、数学的リテラシー、科学リテラシーの3分野が柱となっています。近年では先進的な能力も調査対象とし、協調学習(グループワーク)・デジタル機器による学習・課題解決能力なども調査されています。
【PISAの議論】
PISAは「日本の教育は○○だ!」と教育を国際比較する場面で、基礎資料として用いられています。教員志望者は一読しておきましょう。
【参考文献】
PISA(ピサ) 学習到達度調査 まとめ解説
OECD PISA
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