次の文章を読んで、後の問に答えよ。
ある公卿、石見国の国司にて、石見潟にて遊び給ひけるに、国の習ひにて、かづきする海女ども、えもいはず歌をうたひけるを、人々、「かかる事なむ侍り。召してうたはせて聞こしめせかし」と申しければ、「召せ」とて、召されけるに、皆逃げけるを、中間、侍ども、走り散りて、少々(イ)とらえて参りぬ。御酒なむど給はりて歌仕りける時、逃げ散りたりつる海女ども、また、かたはらに引きのけて、これを群がりみて) (ロ)聞きける中に、十七、八ばかりなる女の、みめ事がら、下臈ともなく、よろしく見えけるが、小侍を一人(ハ)招き寄せて、「あの御前に候ふ、歌仕る女房どもがもとへ、かく申すよし、伝へてたび候へ」とて、
[ A ] もろともにあさりしものを浜千鳥いかで雲井に立ちのぼるらむ
この事を披露しけるを、上に聞き給ひて、感のあまりに、紫の衣をかさね(二)たびければ
[ B ] 紫の雲の上着も何かせむかづきのみする海女の身なれば
と申して、(ホ)返し参らせければ、いとど色まさりて、あはれに思しめして、やがて召してけり。「都へ具して上らむ」と仰せられけるを、父母に離れん事を嘆き申しければ、父母ともに具して上りて、御台所となりて、君達あまた出できなむどして、めでたかりけり。(へ)人の心は優しかるべきものなり。
(出典:沙石集)
問一 傍線部分(イ) (ロ) (ハ) (ニ) は、それぞれ誰の動作か、文中の語句を抜き出して答えよ。
問二 [ A ]の歌の「浜千鳥」「雲井」の語は、それぞれ何をたとえたものか、答えよ。
問三 (ホ)の「返し参らせければ」とあるが、なぜそのようなことをしたのか、[ B ]の歌を踏まえて説明せよ。
問四 (へ)の「人の心は優しかるべきものなり」は、誰の、どのような行為を受けてけて述べたものか、文章全体を踏まえて説明せよ。
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