メリット1 保守性:
子供から10代の若者は、まだ生活習慣が確立していないのでよく物を紛失します。電子教材は何度でも再生が可能なので、紛失してもすぐに回復できます。生徒の学習能力がまだ低い段階の初中等教育(6歳から18歳が所属する)機関は、電子教材の導入によって教材の管理能力が向上します。
メリット2 機動性:
教科書や辞書が知識を増やせば増やすほど、学習者にとっては持ち運びが不便になります。どこの家庭・教育機関にも、もう数百年以上は誰も開いていないのではないかという辞書・全集・図鑑があります。それらの教材は知識の量では優れていますが、残念ですが知識の機動性には劣っていると、現在の技術水準ではいえるでしょう。軍隊のように重たい教材を持ち運ぶことは、もうなくなるでしょう。
メリット3 能動性:
紙の教材は学習者に反応しませんが、電子教材は学習の行動に反応して、変化します。このような能動性は、カリキュラムの統一を損なう恐れがある一方で、学習者に能動的な姿勢を求めるようになります。次期学習指導要領における「主体的で能動的な学び」という理念を、実装するものとなるでしょう。
メリット4 検索性:
電子教材のすべての内容は、検索が容易にできます。紙の辞書にも索引がありますが、数万文字を一瞬で検索できる電子教材の方が便利です。また電子教材における検索は文字に限定されません。画像検索の精度も上がってきており、近いうちに音声検索の対象となるでしょう。
メリット5 漸進性:
電子協材の内容を更新することは、紙の教材よりもはるかに容易です。したがって電子教材は、紙の教材のように固定された知識を購入するメディアではなく、ゆるやかに進歩していく知識環境を購入するメディアです。どこかで時間を区切って真実を確定するのではなく、ゆるやかに真実の知識に近づいていく姿勢を取ります。このような知識の存在論を、元グーグル研究員の Evan you さんは progressive framework という概念を提唱しています。日本語では「漸進性」と訳しています。知識の漸進性に対して、教育は「学習者の学習能力そのものを高める」ことを目標とすべきです。
デメリット1 思考性:
現在までの研究では、同じ内容を同じ時間だけ学習した場合は、紙の教材の方が、電子教材よりも、成績が上がることが判明しています。その原因として「手書き」の影響や「紙と電子画面」の違いなどが検討されていますが、正確にはわかっていません。1950年代にテレビ放送が始まったときのように、メディア自体が持つ性質が、今後も分析されていく見込みです。理論と現実の成果の差については、きちんと検証すべきです。
デメリット2 逸脱性:
電子教材はリンクによって、いつでもカリキュラムの外へと逸脱することが可能です。学習者は勉強しているようで、注意・意欲を奪われて(例えばLineやyoutubeばかり見ていて)知識・技術が身につかなくなる恐れがあります。東北大学によってLineが学習能力を低下させる可能性が指摘されています。ここでの学習者の注目・意欲は、他のメディアと競合状態にあります。学習者が、芸能人のゴシップ・空を飛び地球を砕くスーパーヒーロー・友達付き合いのためのSNS投稿よりも、学習することに価値を見いだせるかどうかが、電子教材の成功を左右します。
デメリット3 無秩序性:
電子教材は「知識を購入」するのではなく「常に最新の情報にアクセスできる権利を購入」します。そのような学習環境においては、情報が足りないのではなく、「情報が多すぎてて無秩序になる」ことに問題があります。例えばオンライン講義は、対面講義よりも脱落率が高く、履修完了率が低いことが実証されています。学習者が情報の海で迷わないように、教育者の役割は「知識技術に秩序を与えること」へと重心が移ります。ヘアサロンのスタイリストやバーのソムリエのように、現状を分析し、問題解決を提案する能力が重視されるようになります。
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