Q:日本社会のサイバー補導とは、何ですか?
A:サイバー補導とは(さいばーほどう)とは、子どものインターネットへの違法書きこみを、警察官がおとり調査で応対し、実際に現場に現れた子どもを補導します。インターネット犯罪を防ぐための新しい種類の補導です。
Q:日本社会のサイバー補導は、いつから始まったのですか?
A:サイバー補導は2013年から全国の警察で実施されています。インターネット・携帯電話の普及率とともに、増加傾向にあります。
Q:日本社会のサイバー補導は、どうして始まったのですか?
A:思春期の子どもたちは、自分たちだけの閉鎖的な集団を作る傾向にあります。家族から離れて、「僕らの」・「俺らの」・「ウチらの」集まりを求めます。同年代の仲間と過ごすことは、健全な成長の一環です。社会が変化しても、同年代の仲間と青春を送りたいという子どもの願いは、なくならないでしょう。子供たちの交流の場は、大人の目につきやすい物理的な空間から、ネットのサイバー空間へと移行していっているのが、現代社会の傾向です。そこで、これまでの街頭補導に加えて、サイバー補導が始まりました。
Q:日本社会のサイバー補導は、どのようなデータあるのですか?
A:サイバー補導のデータは各警察により発表されています。
虐待通報電話番号189番
補導した児童の6割は非行・補導歴がない。
援助交際目的の児童は下着売買目的の児童と比べて、非行・補導歴を有する児童や有職・無職の割合が多くなっている。
補導した児童の9割は援助交際等の書き込みにスマートフォンを使用している。
保護者の知らないうちに児童が援助交際等の書き込みなどをしている。
無料通話アプリのIDを交換する掲示板とともにSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)への書き込みも見られる。
街頭補導と異なり児童と接触できないことがある。
Q:日本社会のサイバー補導は、どのようなデータの傾向があるのですか?
A:警察庁のデータから、2点が推測されます。1つめは、女子の犯罪は見えにくい点です。女子が犯罪をしないというのは固定観念です。男子がみな暴力を奮うわけではないように、男子女子と単純に子どもを分類することにも、限界があります。それでも、目に見える物理的な暴力を選ばないという点で、女子の犯罪は男子よりも見えにくいです。他者の視線が及ばないところでは、犯罪に誘惑されやすい性質があると考えられます。2つめは、女子は他人を攻撃するのではなく、自らを貶めようとする点です。初犯の割合が多いことから、お金を目的として常習的に書きこみをする者は、少数です。好奇心や、居場所のなさなどが原因になっている可能性も否定できません。いずれにしても、加害の意思よりは、適切な意欲・目標が持てない消極的な気持ちが温床にあるとと考えられます。
Q:日本社会のサイバー補導は、どのような効果があるのですか?
A:サイバー補導の実施により、以下のような効果が発表されています。
保護者からの感謝事例
援助交際の書き込みをしていた児童(14 歳:中学2年生)の母親から「最近携帯ばかりいじっていて、何をやっているかも聞けず分からなかったのですが、今回の件をきっかけに娘としっかり話をしていきたいと思います。ありがとうございました。」と謝辞を述べた。(警視庁)
下着売買の書き込みをしていた児童(17歳:高校2年生)の母親から「娘がこんなことをしているとは思わなかった。娘と会ったのが悪い人ではなく警察の方で良かったです。ありがとうございました」と謝辞を述べた。(山口県警察)
児童への継続的な助言・指導により問題行動が改善
援助交際の書き込みをしていたA子(17 歳:高校3年生)を補導した後、少年センターの少年補導員による面接指導を続けたところ、A子は学校生活や就職活動に熱心に取り組み始め、その結果、生活は落ち着き、高校卒業後の就職先も決まった。A子は「補導されたことで援助交際を本気で辞めようと決心することができた。少年センターに通い自分の事について考える機会を持てて良かった。」と申し立て、母親からも「充実した生活を送っている様子がうかがえる。安心して見ていられるようになりました。」と申し立てるなど、サイバー補導後の継続的な助言・指導により問題行動が改善された。(千葉県警察)
Q:日本社会のサイバー補導は、どのように考えられるのですか?
A:サイバー補導は、公共空間と私的空間が、インターネットへと拡散したものだと考えられます。1990年代以降、10代の生徒はポケベル・PHS・携帯電話・スマートフォンなどを利用して、友達付き合いをするようになりました。新しい通信手段は、まずは流行商品という魅力で、子どもたちを個人消費の対象とします。新商品が発売されれば、子どもたちは大人よりも早く利用したがります。このようなメディアは、便利さに加えて、自分だけの私的な空間を生みだす性質があります。もともと、子どもは自分だけの世界を生み出そうという傾向があり、そのような性質を、メディアが拡張していると考えられます。
例えば、携帯電話のおしゃべりに夢中になることは、その場にいる空間と、おしゃべりの相手との私的空間を、曖昧にさせます。そしてこの混乱自体が、ひとつの面白い体験として、子どもを刺激します。新しい通信手段は、便利なだけではなく、自分だけの私的な時間と空間を演出するものとして、魅力があるのではないでしょうか。
質問と回答